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眠れ、眠れ、お菊虫

(所沢市HPふれ里だより平成25年12月号」より)

秋を追い立てるようにやってきた冬将軍。アオハダが黄色に輝き、コナラが赤褐色の葉を揺らし、足元には紅いヤマザクラの葉。日ごとに景色が変わっていきます。
今年は出足が遅いのか、数が少ないのか、野鳥はちょっぴりさびしいようです。それでも空が透けて見えるようになった枝先を、冬越しのためにやってきたルリビタキが「ヒッヒッ、カッカッ」と鳴きながら移動していく姿が見られるようになりました。

日中の陽だまりではキチョウやムラサキシジミ、ルリタテハなどの成虫で冬を越すチョウが見られます。
卵で冬を越すのはオオミドリシジミ。ゴマダラチョウは幼虫で、アゲハの仲間は蛹(さなぎ)で冬を越します。

『お菊虫』と呼ばれるのは、ジャコウアゲハの蛹です。これは皿屋敷のお菊に由来していて、後ろ手に縛られつり下げられている女性のように見えることからと言われます。ジャコウアゲハという名前も気になるところですが、これは雄の成虫が麝香(ジャコウ)のような匂いを出すことに由来します。

姫路城下にお菊が身を投げたとされるお菊井戸がありますが、1795年この井戸に大量のジャコウアゲハの蛹が発生し、これはお菊が虫の姿を借りてこの世に恨みを晴らしに現れたと言われたそうで、戦前までは夏の縁日などで蛹が売られていたそうです。また、姫路市は、市の蝶にジャコウアゲハを指定しています。

ジャコウアゲハは、本州より南西諸島まで分布しますが、産地は局地的で、東北ではまれです。今ははずされているものの、少し前には埼玉県で絶滅危惧種とされていました。

幼虫が食べるウマノスズクサですが、これも場所によっては絶滅危惧種に指定されています。ウマノスズクサには毒性があり、これを食べることにより体内に毒を蓄えます。毒は成虫になっても残り、ジャコウアゲハを食べた野鳥は中毒を起こすので、野鳥には食べられません。

ウマノスズクサは河川敷や草原などに自生しますが、ジャコウアゲハの幼虫は蛹になる時にかなりの距離を歩くようで、蛹は人家の軒下、ガードレール、石垣、フェンスなどでよく見つかります。4月下旬頃までは眠っているので思わぬ所で見かける機会があるかも知れません。

この辺りでは年2回の発生とされ、2回目は1、2週間で羽化しますが、個体によりまちまちで、時には長く休眠するものもあり、食草が足りないときなどは共食いもしますから、一度に発生して生存競争になるのを避けているのかもしれません。

幼虫、蛹、成虫と、常に他のアゲハの仲間とは異なるジャコウアゲハ。春には毒を蓄えた身体で緩やかに飛ぶ姿が見られることでしょう。


ジャコウアゲハの蛹

ジャコウアゲハ 産卵

コナラ