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香る思い出、金木犀

(所沢市HPふれ里だより平成26年10月号」より

秋らしい日が少なくなってきているような昨今ですが、10月は秋真っ盛り。ツバメシジミなど成虫越冬をしないチョウの姿もまだ多く見られます。
ヤマザクラは既に葉を落とし始め、緑の森にヤマウルシやツタは紅い点景を添え、エンマコオロギやツヅレサセコオロギ、カネタタキ、鳴く虫たちの声も哀愁を帯びています。

今年の10月2日は旧暦の重陽で菊の節句。野でもノコンギクやシラヤマギクなどが見られます。6日は十三夜、別名栗名月とも言われ、栗のおいしい時季です。そして8日は日本全国で皆既月食が観られます。この日は寒露。霜はまだ降りないものの、草木に冷たい露が宿るころで、夏鳥と冬鳥が入れ替わり、空も澄み渡るころとされます。

食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋。何をするにもよい季節。子供たちが運動会の練習をする声が聞こえてくる中、歩いていると庭先や公園などから甘い香りが漂ってきます。
秋を告げているのはキンモクセイの香りです。ある年代にとってはトイレの芳香剤の匂いと言うことになるかも知れません。1970年代から約20年間はキンモクセイの香りがトイレの芳香剤として圧倒的に多く使われていたので無理もありません。
今では消臭技術が発達したので、強い匂いでいやな匂いを消すのではなくなりましたし、香りの嗜好性も広がったので、ほとんどなくなりました。
汲み取り式のトイレが大半だった頃は、トイレのそばにキンモクセイを植える家もあったと言われます。でも、9月下旬頃から10月上旬頃が花期なので、季節限定の消臭剤ですね。

学名や属名にも『香りのする花』の意味が付けられています。香りで季節を感じたり、「運動会の季節だな。」など、何かを思い起こさせてくれたりするキンモクセイ。秋の季語にもなっていますが、江戸時代に中国から渡来したとされる常緑小高木です。その際、花つきの良い雄株だけを移入したので日本では実を見ないと言われています。ただ、九州地方でウスギモクセイが自生していてそれからキンモクセイが育成されたという説もあります。

中国名は丹桂。塩漬けにした花を蜜煮し、熟成させた桂花醤は主にデザートなどに香りや甘味、彩りを添えるために使われ、花を白ワインに付け込んで熟成させた桂花陳酒は楊貴妃が愛飲したとか。

大気汚染に弱く、花つきが悪くなったり、香りが薄くなったりするようで、大気汚染が深刻化した高度成長時代にはキンモクセイが匂わないといった記述もあります。中国ではキンモクセイは月の香りとも言われるとか、澄んだ空に輝く月とキンモクセイの香り。大気も澄み渡っていることでしょう。


キンモクセイ

ツバメシジミ

シラヤマギク


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