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内緒の話、エゴツルクビオトシブミ(所沢市HPふれ里だより平成28年5月号より)

一足早く初夏の陽気となった日が多かった4月。緑陰は日ごとに濃くなり、カマツカ、ツクバネウツギ、ミズキ、サワフタギと木々の白い花が5月を待たずに咲いていきました。

エゴノキも甘い香りを漂わせ白い花を咲かせる5月ですが、4月下旬、新葉を開きつぼみをたわわに付けたエゴノキに何やら筒状のものがぶら下がっているのを見かけるようになります。
これはエゴツルクビオトシブミの揺籃(ようらん)で、幼虫のゆりかごです。中には卵が一つ産み付けられていて、孵化すると中で葉を食べ、蛹になりやがて成虫となって出てきます。

エゴツルクビオトシブミは1センチにも満たない小さな甲虫です。甲虫と言えばカブトムシやクワガタがまず思い浮かぶでしょうが、一見蟻のように見えて、近づいてよく見ようとするとブーンとその翅を広げ飛んで行ってしまいます。その姿に「ああ甲虫だ!」と思います。

その名のとおりエゴノキの葉を食べる、首の長いオトシブミの仲間です。オトシブミの仲間は日本に約20種いて、揺籃を落とすものと、落とさないものがいます。初夏に見かけるこの筒状の小さな落としものは別名『ホトトギスの落とし文』、『カッコウのたまづさ』。
江戸時代公言するのがはばかれる恋文や密告などを巻紙に書いてわざとわかるように落としたのが『落とし文』。それに似た形なのでこれを鳥の落とし文と考えたとか。おりしもホトトギスやカッコウが繁殖のため渡ってくる時期、中身は恋文でしょうか。

葉を食い荒らす幼虫はたくさんいますが、オトシブミの仲間は葉っぱ1枚で成虫になるとっても行儀が良いというかエコな虫です。
どれも日本全国で見られる普通種にもかかわらず、存在を知らない人も多いのではないでしょうか。

初夏の森を歩いているとゆりかごは見かけますが、成虫には案外出会えないものです。成虫に出会えるのは8月頃までなので、ゆりかごが見つかったらしばらく注意してあたりを見てください。長い首を伸ばして思慮深げにじっとしていたり、うなだれていたり、人の気配に緊張感のある体制でこちらの様子をうかがっているようだったりとなかなか見ていて飽きません。
雄の方が長い首をしていて、ゆりかごを職人技のように作るのは雌です。葉の上を行ったり来たりしてまず素材選びから始まり途中で産卵します。この制作現場に出くわすととても面白いです。

葉がまだやわらかいこの時季ならではのゆりかご作り。時にはたくさんぶら下がっていることがありますが、天敵は寄生蜂やハナグモの仲間など。無事育った成虫はスギの樹皮の下などで集団越冬することが多いそうですが、秋には見ることがないのでずいぶん長い冬眠のようです。

チョウも多く見かける時季ですが、アカシジミやミズイロオナガシジミなどのゼフィルスたちと出会える、年に1度の季節がそろそろ始まります。

5月10日から16日は愛鳥週間です。多くの野鳥たちは子育て中。コゲラやアオゲラが木に巣穴を開けている姿を目にすることもあります。北へ帰るシロハラやツグミ。南から繁殖のために帰ってきたキビタキやヤブサメ。移動中の普段あまり出会えない野鳥たちにも出会えるかもしれない、緑まぶしい5月です。


エゴツルクビオトシブミと揺籃

エゴノキ

エゴツルクビオトシブミ♂

コゲラ


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