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春風誘うフキ(所沢市HP「ふれあいの里だより平成30年2月号」より

 

本当に寒い冬となりました。日本各地で数年に1度の大雪が降り、狭山丘陵も1週間以上雪景色が続きました。

暦の上では立春、そして雨水と春を迎える2月です。雪の下からは蕗の薹も顔をのぞかせ始めています。

蕗の薹は、早春の代表と言える山菜として、古くから日本人に親しまれてきましたが、これはフキの若い花芽です。

フキは岩手県以南の本州、四国、九州、沖縄の山野に生えるキク科の多年草です。日本以外では朝鮮半島、中国に分布しています。雌雄異株で、地下茎を伸ばして増え、葉は花が咲いた後に地下茎の先から出ます。

花期は2月下旬から5月。雄株の頭花は黄白色で筒状の両性花ですが結実しません。雌株の頭花は白っぽく見え、雄花と同じ形の両性花が数個混じりますが、これは花粉ができません。

フキの名前の由来の一説に、冬に黄色い花を咲かせる、『ふゆ』『き』からついたというものがありますが、これは一面に広がった雄株のことでしょう。

古名は『フフキ』で、春一番に芽吹くからとか、葉が大きく少しの風にも揺れるからなどの他に、用を足した後に葉で拭いたからなど、これも諸説あります。

学名はPetasites japonicusで、Petasitesはギリシャ語のつば広の帽子(petatos)が語源とされ、葉が広く大きいことからきています。

雌株は花が咲いた後高さ45cmくらいに伸びタンポポの綿毛のような種子を風に飛ばします。

ほろ苦い早春の味、蕗の薹の季節が終わっても、葉柄はきゃらぶきや煮物に、葉身はつくだ煮などにされるほか、咳止めや去痰などの民間薬にも利用されます。

フキの変種で葉が大きいアキタブキは北海道、秋田、岩手県以北の本州、千島、樺太に分布し蕗の薹も大きく、栽培もされています。北海道足寄町の螺湾川に沿って分布するアキタブキは日本一大きく、高さ2メートルから3メートル、茎の直径10センチメートルにもなり『螺湾ブキ』として北海道遺産に指定されています。こちらも町の地域特産物として栽培され羊羹、漬物,カレー、石鹸など様々な加工品が作られています。

アイヌ伝承に登場する小人コロポックルは『フキの葉の下の人』という意味とされますが、螺湾ブキなら普通に人がすっぽり下に入れます

  明日よりは春菜(はるな・わかな)摘(つ)まむと、標(し)めし野に、昨日も今日も雪は降りつつ

万葉集にある山部赤人の歌ですが、春の七草など早春の野に芽吹く食用になる草本を総称して春菜(はるなまたはわかな)と呼んでいて蕗の薹も含まれていたと言われます。春菜を摘もうとしていたのに降り続く雪…。春を待つ心は今も昔も変わらずといったところでしょうか。

冬鳥として渡って来たジョウビタキもまだまだ見られますが、繁殖期がほかの鳥より早いモズやエナガはさえずりを始めています。香りに誘われて見回すと梅の花を見付けることも増えてくる頃です。日だまりで翅を広げる成虫越冬したチョウに出会えるのもそう遠くはないでしょう。

 蕗の薹


フキの雄花

ジョウビタキの雄

白梅



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