身近な白い蝶スジグロシロチョウ~ふれあいの里だより令和3年4月号~
記録的な暖かさだった3月。春は駆け足でやってきました。春はもともと変化の速い季節ですが、今年は本当にあっという間に様々な花が咲いていっています。
チョウたちも遅れないようにとばかりに増えてきています。中でも白い蝶が舞う姿はいかにも春を感じさせてくれますが、ここでまず思い浮かぶのはモンシロチョウではないでしょうか。もちろん日本全土に普通にいて名前もよく知られていますが、身近で見ているのはスジグロシロチョウの方が多い可能性があります。
スジグロシロチョウは北海道、本州、四国、九州の平地から山地の林縁部や渓流沿いに見られる前翅長24ミリメートルから35ミリメートルのチョウでモンシロチョウによく似ていますが、少し大きくその名の通り翅に黒い筋があるのが特徴です。とは言え、飛んでいるとどれも白い蝶に見え、吸蜜のために花に止まった時などにじっくりと見てやっと分かることが多いです。
スジグロシロチョウは蛹で冬を越し、3月ころから11月ころまで年数回発生します。幼虫の食草はイヌガラシやタネツケバナなど主に野生種のアブラナ科の植物の葉ですが、ダイコンなど栽培種も食べます。帰化植物のショカツサイも食べ、この花の増加とともに数を増やした時期もあります。モンシロチョウもアブラナ科の植物の葉を食べますが栽培種、特にキャベツを好み、古い時代にキャベツとともに日本に入ってきたという説もあるので畑で見かければほぼモンシロチョウでしょう。
やや暗いところを好むスジグロシロチョウ。春は日当たりの良いところでもよく見かけますが、夏はほとんど林縁部の木陰などにいます。
季節型があり、春型は雌雄ともに黒い筋がはっきりと出ていて、夏型は大型にはなりますが黒い筋は薄くなります。
オスの翅にはメスを誘う発香鱗があり、捕まえると独特のにおいがします。これはレモンの匂いとか柑橘系の匂いと表現されたりもします。
卵は食草に産み付けられ、モンシロチョウの卵より大きく、数は少なめです。これはモンシロチョウの天敵であるアオムシコマユバチにほとんど寄生されることがないことが大きいと思われます。
野生種を食べることにより害虫として殺されることも少ないので、スジグロシロチョウの方がどんどん数を増やしていきそうに思われますが、必ずしもそうではないようで、ショカツサイとともに増えた後また数を減らしているようです。理由ははっきりとはわかっていませんが、温暖化も影響しているようです。それに対して高温に強いモンシロチョウが数を増やしているとも言われています。
木の多く茂った公園や林縁で白い蝶を見たらたぶんそれはスジグロシロチョウで、モンシロチョウより身近な蝶と言えるかもしれません。
足元にはチゴユリの白い花や黄色いニガナの花、オトコヨウゾメ、ツクバネウツギ、カマツカなど木々の白い花も年々早く咲くようになってきているように思えます。
新緑から深緑へ今年は特に早く移行しています。子育て中のシジュウカラやヤマガラなど野鳥たちはヒナへとチョウやガの幼虫を運びます。冬越しに来ていたルリビタキの声もまもなく聞けなくなります。子育てのために帰ってきたツバメが空を滑空する姿も見られるようになりました。いつしか季節は初夏へと移り変わろうとしています。
行く春や鳥啼き魚の目は泪 松尾芭蕉
スジグロシロチョウ |