シメ、冬野に溶け込み~ふれあいの里だより令和7年2月号~
今年は2月3日が『立春』。暦の上では春ですが、もっとも寒く衣更着(きさらぎ)とも呼ばれる2月は始まったばかりです。今年は遅れているという梅の開花の知らせも少しずつ聞かれるようになり、枯れ野のようなところにもホトケノザやオオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウなどが低い草丈で花を咲かせていることがあります。春の香りフキノトウを楽しもうとしているうちにフキも花を咲かせます。
枯れ草の中でガサゴソと音がしたら、野鳥が餌を探しているかもしれません。地面の中にいそうなミミズなどを探していたり、草の種を食べていたり、餌の少ないこの時期に草原は貴重な餌場となっています。
跳ね歩きながら種子を探すシメもそんな場所で見つかるかもしれません。シメは本州中部以北の山岳地域や北海道などで一部繁殖していますが、ヨーロッパに広く分布し普通で、ユーラシア大陸の西端と東端に分布しているのは少し珍しいと言えるでしょう。冬期、北海道などから移動してきたり、時に海外から渡ってきたりして本州の都市公園などでも見られます。全長16~18㎝で尾は短くずんぐりむっくりした体型をしています。太いくちばしが特徴で、冬は肉色をしていますが、春から次第に黒みを帯び始めます。太く強いくちばしは殻が厚い種子も食べることができます。かむ力は30㎏を超えると言われています。くちばしの色から蝋嘴鳥(ろうしょうちょう)の別名があり、「しっ」という地鳴きをする鳥(め)ということでシメとついたとされています。
いかめしいくちばしから目にかけて黒い帯状の部分があり目つきが鋭い悪者顔に見えるものの、冬の野に溶け込むような色合いで、一見地味に見えがちな体色も羽先に紺色の光沢のある部分があったりチラリと見える白い部分があったりと思いのほか美しいものです。
また、オスがちょっと羽を広げメスにお辞儀するような求愛ディスプレイをし、くちばしをふれあわせるなど微笑ましい行動をすることも知られています。巣は樹上に雌雄で造り抱卵はメスが行い11~13日で孵化し、餌は雌雄で運びます。そして12~13日たつと雛は巣立っていきます。繁殖期には甲虫などもその強いくちばしで捕まえて食べます。
シメは冬は単独でいることが多く、樹上などから「ピチン、ピチン」といった声が聞こえてくることがあります。4月頃には群れになって移動していきます。どことなく憎めない感じのシメにもうしばらく出会える時期は続きます。
寒いからこそ空は澄み明るい星が多い冬は星空観察にもよい季節です。金星は宵の明星としてひときわ明るく輝き天頂付近には木星、火星が輝いています。冬の大三角の中でもひときわ明るいのはおおいぬ座のシリウス。マイナス1等級前後の星が一度に4つ見られるのはなかなかない機会です。さらに視野を広げると、冬の大三角の近くに集まる明るい星で大きな六角形が形成され、冬のダイヤモンドとも呼ばれます。今その一角の双子座のポルックスの近くに赤く輝く火星が見られます。
次第に長くなっていく昼間の時間。光の春が感じられる中、今にも咲き出しそうなコブシのつぼみを尻目に早咲きの川津桜が咲き始める2月です。
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