ニイニイゼミ、夏本番を歌い
(所沢市HPふれ里だより平成25年7月号」より)
7月は梅雨から夏本番へと移り変わるときですが、夏はセミの鳴き声と共にやってくると言っても過言ではないように思います。
そして狭山丘陵で夏本番を歌い始めるのはニイニイゼミ。6月下旬頃から時折声が聞かれますが、梅雨明け宣言が出るや俄然賑やかになり、8月頃までがピークで、9月まで聞かれます。
鳴き声は、「チー ジー チー」と長く延ばし連続します。体長は35㎜くらいで、日本のセミとしては珍しく翅が斑模様です。北海道から沖縄本島、台湾、中国、朝鮮半島に分布し、一時期東京周辺では数を減らしましたが、今また増えてきているようです。
朝早くから、ヒグラシに負けじと鳴き始め、一番暑い時間帯は少なくなりますが、ほとんど一日中鳴いていて、夜でも街灯の側で鳴いていることがあります。
脱け殻には泥が付いていて、比較的低い位置で羽化しますので、見付けやすく、一目瞭然です。
サクラの木で声を頼りに探すと良く見つかります。身近にはいるものの、体と翅の灰褐色の模様は保護色となっていて、近くに行って初めて気づくこともしばしばです。
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声
山形県の立石寺で、今の暦で言うと7月13日に歌われた、有名な松尾芭蕉の句ですが、これはニイニイゼミの声だと言われています。
もちろんニイニイゼミも鳴いているのは雄が雌に求婚しているのですから、命を繋ぐための熱唱とでも言えるでしょうか。雌が近くに来ると、鳴きながらじりじりと木の幹や枝をにじり寄るように歩いていく雄の姿を見かけることもあります。丸っこく頭でっかちに見える体で鳴きながら歩いている姿は少し微笑ましくもあります。
関東甲信地方の梅雨明けは平年7月21日、日の出の時間は4時40分ですから、すでにニイニイゼミは鳴き始めていることでしょう。今年はこの頃夜明け前の東の空に、木星と火星が接近して見られます。
いよいよ夏本番。7月上旬にはリョウブも咲き終わり、深緑の木々は木陰と森林浴を楽しませてくれます。足下にはヒメヤブランやジャノヒゲの小さなユリ科の花たち。そして白い大輪の花を揺らすヤマユリが香りを辺り一面に拡げます。蜜に誘われてやってくるクロアゲハ、足元から不意に飛び立つクロヒカゲ。チョウの姿も目立ってきます。
シジュウカラの若鳥が群れで枝から枝へとガの幼虫などを捕って渡っていきます。2回目の子育て中の親鳥もそろそろ子育てを終え、やがて幼鳥の群れと合流します。恵みの雨で潤った森は多くの命を育てていきます。
ニイニイゼミ |
ヤマユリ |
クロヒカゲ |