ようこそ、ツグミさん
(所沢市HPふれ里だより平成25年10月号」より)
だんだんと春や秋がなくなっていきそうな不安に駆られる昨今ですが、長期予報では今年の10月も気温は高めのようです。
日中はまだ暑い日があるものの、確実に昼間の時間は短くなって行き、空の色や浮かぶ雲に『秋』を感じることが多くなっています。
空を見ているとアキアカネなどトンボの姿が見られますが、野鳥たちは渡りの季節です。春の渡りの時とは違い、静かに渡っているので、気づかれないことが多いですが、少し葉を落とし始めた木々の梢に思わぬ野鳥の姿を見つけられることもあるでしょう。行く鳥か、来た鳥か。それも楽しみです。
10月も末になると、冬鳥の代表とも言えるツグミがシベリアから渡って来ます。「クェックェッ」と言うような特徴的な声が高いところから聞こえて来たら探してみてください。日本全国に渡来しますが、北海道では立ち寄り、更に南へ移動していきます。
渡って来てしばらくは群れでいることが多く、地上にはあまり降りてきません。秋の恵みの木の実を山などで堪能した後は、市街地にもやって来ます。冬の間は、群れは解消し、農耕地、草原、河原など開けた場所の地上でミミズや昆虫を採餌する姿がよく見られます。
ピョンピョンと跳びはねるように歩いては止まり、胸を反らしてあたりを警戒します。数歩歩いてはピタリ、数歩歩いてはピタリをくり返し、その都度キメのポーズとなります。
さえずらないところから、口をつぐんでいるとして、『ツグミ』と名前が付いたと言われますが、繁殖期でないこの時季にさえずらないのはもっともな話です。
2声で鳴く地鳴きは良く聞かれ、声を頼りに見付けやすい野鳥です。また、ゴールデンウイーク頃までこの辺りにいますが、この頃は陽気に誘われさえずることもあります。
渡って来てすぐのツグミは脂肪を充分に蓄え、霞網で一網打尽に捕らえられ食用とされてきました。昭和22年9月、狩猟に関する法律の改正により霞網漁が禁止され、ツグミも狩猟鳥から外れていますが、残念ながら密猟は後を絶たないようです。
黒褐色で冬枯れの草原にとけ込むような色合いとは言え、個体差がかなりあるので、よく観察しているとお馴染みさんがわかるようになるかもしれません。また会えたねと親しみも湧くことでしょう。長い冬越しの始まりです。良く出会う1羽が見つかると楽しいですね。
ウラナミシジミ、キタテハ、ヤマトシジミ、チョウもまだまだ見られます。ノコンギク、シラヤマギク。キツネノマゴは夏の終わり頃からまだ咲き続けています。クヌギやコナラ、今年はドングリも豊作なようです。
秋の日はつるべ落とし。西の空には10月7日は土星、8日は金星の近くに細い月が見えます。開けた場所では水星も見ることが出来るでしょう。聞こえてくるのはエンマコオロギ、カネタタキ、カンタン。鳴く虫たちの合唱です。
ツグミ
ノコンギク エンマコオロギ
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