風に揺れる白金、マルバアオダモ
(所沢市HPふれ里だより平成27年4月号」より
風光る4月。新学期。新年度。雑木林ではコナラやクヌギなどが新しい葉を広げています。各地から届く桜の便りも心浮き立つとともに、あわただしさを助長しているようです。
春霞のぼんやりとした風景ですが、どこもキラキラ輝いているようです。ふと気づくと風に揺れて白い花が太陽の光を受け瞬くように揺れている姿が目に留まります。
北海道から九州の平地から山地まで、日当たりのよいところに普通にみられる落葉高木、マルバアオダモです。時には10メートル以上の高さになるものもありますが、5メートルくらいのものが大半です。日当たりが良いところでは発芽後数年で花を咲かせ始めます。
どこにでもあるようで、このあたりを歩いていてそんなに多く目にするわけではありません。4月から5月にかけ、新枝の先に円錐形に白い花を多数つけます。遠目に見ると白い綿の固まりのようです。これまで気づかずに通り過ぎていたところで、白金のように風に輝く姿に出会うとうれしくなります。
花には白いリボンのような4枚の花弁があり、雄花には2個の雄しべが、雌花(両性花)には2個の雄しべと1個の雌しべがあります。雌雄別株で、雌株の方が花数も少なく、小さくまとまったように見えます。花弁の一つ一つの大きさは6ミリから7ミリ。これらの集合体がふぁさふぁさと風に揺れているのです。
マルバアオダモはトネリコの仲間で、約10種が日本には自生していますが、材が有用なものが多く、アオダモは野球のバット材として知られます。丸葉とついていますが、別名にホソバアオダモとあるくらいで、葉が丸いわけではなく、アオダモに比べ、葉の縁が滑らかだということからきています。
涼やかな葉は紅葉も楽しめ、灰色で細かい毛におおわれた冬芽も特徴的です。病害虫に強く、庭木としても人気を集めているようです。
『夏初月』の別名もある4月は、季語も多く、春から初夏へ移ろいゆく中、多くの生きものたちや事象が見られます。ウワミズザクラが桜の季節の終わりを告げ、ツボスミレが菫の季節を締めくくっています。二十四節気では万物がすがすがしく明るいころとされる清明(今年は4月5日)から百穀を潤す雨が降るころと言われる穀雨(同じく20日)へと移り変わります。
あわただしく過ぎる日々、エナガやシジュウカラ、ヤマガラなど野鳥たちの幼鳥の声が次第に聞かれるようになります。
春の妖精、カタクリやムラサキケマン、ミヤマセセリやコツバメの姿も消え、マルバアオダモの他にもカマツカをはじめ、白い木々の花の季節が始まります。アゲハに続きクロアゲハの姿も見られるようになり、蝶の数も増えていきます。生命力溢れる初夏が始まろうとしています。
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