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ジロボウエンゴサク妖精たちのおしゃべり(所沢市HP「ふれあいの里だより平成31年3月号」より)

暖冬だった今年ですがやはり春は待たれます。高らかにさえずり、巣造りを始めようとしているシジュカラやヤマガラも、木々が芽吹き、ガの幼虫などの虫たちが出てくるのを待っています。

小さな優しい緑の葉を冬の寒空の下北風に揺らし、春いち早く花を咲かせようと待っているのはジロボウエンゴサクです。

ジロボウエンゴサクは平地の草地、林縁などに生える草丈10から20センチほどの多年草で、本州の関東地方以西、四国、九州に分布します。少し変わった名前ですが、漢字では次郎坊延胡索。延胡索はこの仲間の漢名をそのまま当てたものです。次郎坊というのは昔伊勢地方で子どもたちがスミレを太郎坊、この花を次郎坊と呼び花の距をひっかけて草相撲をして遊んだことから次郎坊延胡索と名前がついたとされます。

春の妖精、春の短い命とも呼ばれるスプリング・エフェメラルのひとつともされ、花が終わるとやがて地上部は枯れてしまいます。花期は4月~5月ですが、日当たりの良い場所などでは3月下旬ころから長さ1.2センチから2.2センチほどの細長い筒状の花を総状に咲かせ始めます。総状とはいっても数はそう多くなく、2個から7個で4個程度のものが多く見られます。紅紫色から青紫色で長い距は白っぽいので全体的には淡く繊細な感じです。まれに白花も見られます。

よく見ると唇のような花弁は、何かささやきあっているようにも見えます。管楽器のようにも見えさながらブラスバンド。飛び跳ねる小魚にも見えます。春の妖精たちが歌いながら舞い踊っていると思ってみるのも素敵です。長い距に包まれているのは虫たちの目指す蜜線、受粉に役立つマルハナバチの仲間だけに来てもらいたいからですが距に穴を開け盗蜜されることもあるようです。種子にはアリの好きなエライオソームが付いていてアリに運んでもらおうとしています。

同じケシ科のムラサキケマンとよく似ていますが、ジロボウエンゴサクの葉には丸みがあります。どちらも全草に毒性のあるアルカノイドを含み、ムラサキケマンを食草とするウスバシロチョウは体内に毒をためることによって天敵の野鳥から身を守っています。場所によってはジロボウエンゴサクも食草とするようですが、ムラサキケマンが主な食草となっているようです。

漢方では延胡索の塊茎を鎮痛剤などに使います。日本産の延胡索の仲間は代用として使うとはいえ、中国のもののような効能は期待できないとされています。

暖地傾向に広く分布しているものの、夏の強い日差しは苦手でやや湿り気のある場所を好みます。適地が少ないのか個体数は多くありません。地域絶滅の恐れもあります。見た目通り繊細なのでしょう。

3月は月の始めと終わりでは風景ががらりと変わります。今年は桜前線の北上も早そうです。アカシデやネジキ、ゴンズイの冬芽はほころびかけ、ノイバラは葉を広げはじめています。

早咲きの河津桜や椿にはメジロが蜜を目当てにやってきています。ウグイスのまだたどたどしいさえずりも聞こえてくるようになりました。

成虫越冬をしているテングチョウやキタテハ、チョウたちも今年は少し早く眠りから覚めるかもしれません。ミヤマセセリも幼虫からさなぎになり、ほどなく翅を広げる姿を見せてくれることでしょう。

ジロボウエンゴサク

  ガマズミの冬芽

      テングチョウ



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