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チゴユリ咲く惜春の森(所沢市HP「ふれあいの里だより令和2年4月号」より)

暖冬で成虫越冬をしていたキタキチョウやテングチョウの姿が早くから見られ、桜は東京で開花の最早日を更新、狭山丘陵でもお彼岸中に花吹雪が見られた木がありました。

「三日見ぬ間の桜」とはよく言ったもので桜に限らず春は変化が早く、うっかりすると見逃してしまう自然の移り変わりもあります。チゴユリも開花を早めている感が否めません。かつてはゴールデンウィークの頃に見られていたのが、ここ最近は4月中に、しかも早いときは上旬に咲き始めています。

チゴユリは北海道、本州、四国、九州の山野の林内に生える多年草です。高さは20センチメートルから35センチメートルで、茎はまれに分岐します。葉は互生し、長さ4センチメートルから7センチメートルの長楕円形で先がとがっています。4月から6月に茎の先に1個か2個の緑がかった白い花をうつむき加減に咲かせます。花被片は6枚でおしべは6本、真ん中に1本あるめしべの先は3つに分かれます。細い地下茎を伸ばして周囲に広がり、群生して咲いている小さく可愛い花を稚児行列になぞらえて『稚児百合』とついたと言われます。その名の通りかつてはユリ科の植物でしたが、被子植物の新しい分類によってイヌサフラン科になりました。

地下茎は冬になると先端の芽とわずかな根を残して地上部と共に枯れ、休眠します。こうして分断され残された芽から翌春新しい株が成長していきます。もちろん種でも子孫を増やしています。秋に直径10ミリメートルほどの丸い実が黒く熟し、中には直径5ミリメートルほどの種が1つあります。分身したり種で運ばれたりといかにも増えていきそうですが、絶滅危惧種となっている地域もあります。
可憐な姿で育てやすいこともあり栽培がよくされ、特に斑入りの園芸品種は多くあり、人気があるようです。

日本各地で見られる身近な植物なのに、葉の陰になって花が咲いていることに気づかずに通り過ぎることもあります。これからの季節、林の中を歩くときは優しい緑の葉が沢山あるのを見かけたら少し目線を下げてみてください。可愛い稚児たちが、はにかんだように咲いているかもしれません。

3月に早くもオトコヨウゾメが咲きだし、初夏へとつながる木々の白い花の季節が動き始めています。地面に張り付くような姿のまま慌てて咲いたみたいに花茎の低いカントウタンポポもあっという間に種を実らせ、より遠くへ飛んでいくように花茎を高く伸ばすことでしょう。
アゲハの姿も早くから見られています。花たちに遅れをとらないようにと言わんばかりにチョウたちも次々姿を見せてくれます。
子育ての時期を迎えたシジュウカラやヤマガラなど野鳥たちはにぎやかで、ざわつく感じがしますが冬越しに来ていたシロハラやツグミはまだ残っていて慌てない様子。南の国から帰ってきたツバメが忙しく巣材を運んでいるのとも対照的です。
4月の森はのどかなようで目まぐるしく変わっていきます。『春宵一刻値千金』4月8日は今年最大の満月、スーパームーンです。のんびりおぼろ月をめでるのも楽しみの一つです。

チゴユリ

 

  カントウタンポポ

   カラスアゲハ

 



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています