1. TOP
  2. TOP
  3. 月に映えるススキ(所沢市HP「ふれあいの里だより令和2年月10月号」より)

ここから本文です。

月に映えるススキ(所沢市HP「ふれあいの里だより令和2年月10月号」より)

今年の十五夜は10月1日。そして十三夜は10月29日です。お月見と言えば秋の七草。中でも代表的なのはススキで、ススキと月見団子を供えるというのが多く見られる風習です。

ススキは日本全土の野や山の道ばたで普通に見られるイネ科の多年草です。花期は8月から10月で黄色い小さな葯をぶら下げます。ふわふわの種を付けた姿も素敵です。日当たりの良い場所で群生し、秋の風物詩として見ごろを伝えるニュースにもなります。生命力が強くススキの原は観光スポットになっている反面、雑草として嫌われます。

萩の花  尾花葛花  なでしこの花  をみなへしまた藤袴  朝顔の花

万葉集にある山上憶良が詠んだこの歌が秋の七草の始まりとされ、尾花はススキのことです。狭山丘陵も含まれる武蔵野は、中世のころまでススキをはじめ草原に生える植物が茂る原っぱでした。江戸時代には茅場(かやば)や、将軍家や大名の鷹狩り場になりました。古来ススキは茅葺屋根の材料や肥料、牛馬の飼料に使われていました。ススキの原ではよく野焼きをされますが、手を入れないと次第に樹木が侵入して草原ではなくなってしまいます。

使っているのは人間だけではなく、チョウやガの幼虫が葉を食べるのを始め多くの昆虫がススキに来ます。センターエリアではクロコノマチョウの幼虫がしばしば見られます。

粽のように葉が巻かれていたら触らないようにしましょう。カバキコマチグモの巣で、日本在来の毒グモです。カメムシやウンカは若い茎から汁を吸い、ササキリなどキリギリスの仲間は成虫が葉を食べます。

絶滅の危機に瀕しているカヤネズミはススキなどの葉を球状に編んで巣を造ります。

種は冬鳥としてやってくるマヒワのエサになり、根から栄養をもらう植物としてナンバンギセルがあります。

ススキによく似ているのはオギで、穂の先端に細い毛のように見えるノギがあるのがススキです。遠目でわかるのは、ススキは株になりますが、オギは株にならず間隔をあけて生えています。そして、水辺の近くなどの水分の多いところに生えていればオギの可能性が高くなります。

秋、月、薄。日本情緒あふれる風景が目に浮かびます。また澄んだ青空を背景に広がるススキの原はこれぞ『日本の秋』と言いたい絶景です。今では茅葺屋根の家も普通にはみられなくなり草原も姿を消していっています。

月とススキが描かれたものを『武蔵野』といい、着物の柄や茶道具、和食器の模様などに使われます。文化としても残っている武蔵野のススキ。残していきたい原風景です

武蔵野に月あり芒八百里(正岡子規)

今月は満月が2日と31日で、31日は今年最も地球から遠い満月です。6日に地球に最も近づく火星は明るくほぼ一晩中観察できます。エンマコオロギやハヤシノウマオイなど鳴く虫たちの声も耳に心地よく、秋は夜も楽しみです。

秋の七草のひとつフジバカマにはよくアサギマダラが訪れます。花が少なくなってきた分、チョウなどが訪れる姿を待ち受ける場所が絞りやすくなっています。

オトコヨウゾメやガマズミの赤い実、クサギやサワフタギの瑠璃色の実。足元には茶色く熟したコナラ、クヌギ、シラカシなどのドングリも落ちています。

冬越しの場所へと北から来た鳥、南へ行く鳥、秋の移動は静かに行われています。そっと木の実をついばんでいる姿に出会えると「いらっしゃい。」「行ってらっしゃい、気を付けて。」と声をかけたくなります。

ススキ

   アサギマダラ

   オトコヨウゾメ

 



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています