ヒサカキ実る初冬の森~ふれあいの里だより令和3年11月号~

いきふれ自然情報

今年のカレンダーも後2枚、あるいは1枚。11月7日は立冬で、暦上の季節は晩秋から冬へと移ります。少し前からセンターエリアでも冬鳥のジョウビタキの声が聞かれるようになりました。まだまだ移動中の野鳥たちにとって、木や草の実は大切な食糧です。

アオハダやガマズミの実はそろそろ終わりかけていますが、ヒサカキはこれから紫黒色に熟します。直径5ミリメートル程度の小さな実は野鳥たちに人気です。

ヒサカキは青森県を除く本州、四国、九州、沖縄の山地の林床に分布する常緑の低木から小高木です。

和名の由来は、サカキより小さいことから姫榊、サカキではないので非榊などがあります。サカキは常緑高木で葉の長さは7センチメートルから10センチメートルで、3センチメートルから7センチメートルのヒサカキの倍ほどで、鋸歯もありません。冬も緑の葉を付けている常緑樹は古来神聖なものとして扱われてきました。なかでも神の木と書くサカキは神事に使われますが、自生地が関東地方以西のため、関東地方ではヒサカキをサカキの代用品として枝葉が神事に使われてきました。このため葉の細かいヒサカキの品種が神事用に伊豆半島で生産されています。

神事のみならずヒサカキは仏壇にも供えられます。仏壇用にセットされた花の一番後ろに細かい鋸歯のある葉を付けたヒサカキが良く組まれています。

ヒサカキの小さな果実は液果で、ブドウと同じです。中には2ミリメートル程度の種子が多数入っています。実も少なくなる冬場に水分の多いこの実はメジロやヒヨドリをはじめ野鳥たちに好まれ種子が運ばれます。

木灰は和紙の製造に使われ、果実は製油や染料に使われます。中国ではリウマチの痛みに実の煎液を飲んだり、傷口には葉を付き砕いて塗布したりと、薬用に使われます。

生活環境をあまり選ばず適応能力のあるヒサカキは剪定にも強く育てやすいので庭木や生垣にもよく使われます。

花は早春に咲き、独特のにおいがあります。くさいと言われることが多いのですが春が来たと感じる人もいます。目立たないものの実は日本で一番たくさんある木だとか。

雌雄異株ですが両性花をつけるものもあり、よくわかっていないところもあるヒサカキです。

昆虫の姿はめっきり減りましたがまだチョウには出会えます。成虫越冬するキタキチョウやウラギンシジミ、成虫越冬しないもののヤマトシジミも少ないながら飛んでいます。

日没は早くなり、1番星が見えるのも早くなります。11月8日には南西の低い空で細い月と金星が近づき、14日は十日夜。十五夜、十三夜と合わせて三月見とされますが、月を見るよりは秋の収穫祭として田の神様が1年の仕事を終えて山へ帰られるのを送る行事が各地にあります。19日は皆既月食に近い部分月食。この辺りでは欠け始めた月が昇ってきます。まだ冷え込みもそれほどではないので夜空も楽しめるのではないでしょうか。

ヒサカキ

   ヒサカキの雄花

    ヤマトシジミ

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