ハラビロカマキリ卵で春を待ち~ふれあいの里だより令和3年12月号~
まだ紅葉の便りが気になりますが暦の上では『大雪』『冬至』と冬本番へとなって来ます。
昆虫たちはそれぞれのスタイルで冬を越します。カマキリの仲間は卵で冬を越しますが、種によってそれぞれ卵の形も、産み付ける場所も違います。
中でも比較的見つけやすいのはハラビロカマキリで、多くの場合大人の目線くらいの高さの木の枝や壁などに産み付けます。卵と言ってもこれは卵の塊で『卵のう』や『卵しょう』と呼ばれます。秋の終わりにメスは腹の中から分泌する泡の中に数10から数100個の卵を整然と並べて生みます。産卵には長い時間を費やし体力を消耗してしまいます。生みたての卵のうはふわふわに見えますが乾くと発泡スチロールのようになり寒さと外敵から守ってくれます。
それでもカマキリタマゴカツオブシムシやオナガアシブトコバチはそれをすり抜け産卵し孵化した幼虫は中の卵を食べて育ちます。また、コゲラなどがつついて食べていることもあります。
ハラビロカマキリは本州、四国、九州、沖縄の林の樹木上や林縁の草地などで見られる樹上性のカマキリです。体長45ミリメートルから70ミリメートルで日本のカマキリの中では中型、鮮やかな緑色で名前の通りお腹が太めです。稀に褐色型の個体もいます。
前足の付け根に黄色の粒状の突起が3個から4個あり、前翅に白い斑点があるのが特徴です。
5月ごろ孵化した幼虫は脱皮を繰り返し8月ごろ成虫になり、11月ころから時には12月初旬ころまでみられます。幼虫時の方がおなかの広いのが目立ち、威嚇するときなどは腹部を折り曲げます。たくさん生まれても天敵はいっぱいいます。生き残れるのはわずかです。
無事成虫になってもほかの大型のカマキリに食べられることや鳥に食べられることもあります。さらに水生昆虫のハリガネムシに寄生されやすく、寄生されるとやがて水辺に誘導されおなかから水中へハリガネムシが出た後死んでしまいます。
肉食で獰猛なハンターとは言え危険はいっぱいです。恋も命がけと言っても過言ではありません。メスより小型なオスはそっと近づき交尾の機会をうかがいます。先手必勝でメスに食べられてしまうこともあるからです。
2000年以降に侵入が判明した樹上性のムネアカハラビロカマキリも新たな脅威となっています。中国から輸入した箒に卵が付いていて侵入したと考えられ、各地で目撃例も増え、一部の地域では在来種のカマキリが駆逐されている恐れがあると言われています。お腹が赤い大型のカマキリ、卵の形はハラビロカマキリに似ていますが色が白っぽくふさふさとしています。成虫の翅には白い斑点はなく、前足の付け根にある突起は小さく8個から10個程度あります。
葉を落とすのが少し早いようなセンター周辺。冬越しのためにやってきた野鳥たちの姿も見つけやすくなって来ました。ガマズミやウメモドキの赤い実も少なくなってきました。餌が少なくなっていくこれから、ヒサカキの実は格好のごちそうです。ハラビロカマキリの卵が食べられないかそっと見守りたいものです。
12月4日は宵の金星が最大光度。11日は上弦、19日は今年最後の満月で今年一番小さく見える満月です。14日極大と予想されているふたご座流星群も楽しみです。穏やかな年の瀬となりますように。
ハラビロカマキリの卵のう |