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風薫る5月、ホオノキの花~ふれあいの里だより令和4年5月号~

ゴールデンウイークでスタートする5月。木々の緑も美しく青空にこいのぼりが気持ちよさそうに泳ぐ様は深呼吸したくなる風景です。エゴノキ、ノイバラ白い花たちが甘い香りを漂わせながら咲いています。

中でも直径15センチ以上の花を付けるホオノキは圧倒的存在感です。

ホオノキは北海道、本州、四国、九州の山地や丘陵地の落葉樹林内に自生するモクレン科の落葉高木です。大きなものでは高さ30メートル、幹径1メートルほどにもなるので頭上で咲いている花が見えないことが多いのですが、咲くとその芳香で気付きます。枝先に大きな白い花を上向きに付け赤みのある3枚のがく片は開花と共に反り返るか落下し、めしべが花粉を待ちます。2日目にはめしべの柱頭は内側に閉じおしべが花粉を出し始め、花弁は黄味を帯びてきます。3日目には黄色くなった花びらもおしべも落ちていき、最後には柱頭だけが残ります。天候に左右されるので開花の日にちは伸びることもあります。

10月から11月には長さ10センチメートルから15センチメートルの長楕円形の袋果が実ります。やがて割れて赤い種子が白い糸状組織でぶら下がり、こぼれ落ちた後は褐色に熟します。

黄葉した後の大きな落ち葉はあたりを覆いつくします。枝先にはやはり存在感たっぷりの冬芽が目立ちます。細めの葉だけを収めているものと太めの花と葉を収めているものがあります。春の芽吹きの時に葉を展開していく様は花が咲いているようにさえ見え、中心ではつぼみが葉の成長を待っているかのようです。

すべてにおいて圧倒的な大きさを誇るホオノキ。中でも大きな葉は名前の由来にもなっています。別名としてホオガシワ、フーノキ、ホーバなどがありますが、元の名はホオガシワと言われ、ホオは包の意味で、カシワは食物を盛る大型の葉である炊葉(かしきは)が語源とされます。古くから食品を包むのに使われ、今も朴葉味噌、朴葉飯、朴葉焼きなどが名物として残っています。初夏限定の若葉で作った朴葉巻は月遅れの端午の節句に使われ木曽の名物菓子となっています。

材は柔らかく質が均一で加工しやすく軽いので下駄の歯、版木、刀の鞘などに使われてきました。建具、まな板、鉛筆、ラケット、将棋の駒ほかにも幅広く使われています。樹皮は腹痛に効果があると言われる漢方の『厚朴(こうぼく)』に使われます。

数は多くはありませんが、まっすぐに伸びることが多く灰白色で樹齢を重ねても滑らかな樹皮は比較的見付けやすいので、上を見上げてみてください。大きな葉の隙間から花が垣間見えるかもしれません。

そろそろ年に1度発生するオオミドリシジミなどのゼフィルスの仲間にも出会える季節。アゲハの仲間も出そろいました。

ホオノキもノイバラもエゴノキもそれぞれ違う優しい甘い香りを放っています。風薫る5月。さわやかな風は新緑の香りも運んできてくれます。

ゴールデンウイークの後は10日からバードウイーク、愛鳥週間です。センター周辺では子育て中のシジュウカラやホオジロがガの幼虫などを巣に運び、移動中の夏鳥たちにも出会えるチャンスです。北の方へ帰る途中のシロハラやツグミもいて、どんな野鳥にあっても不思議ではないワクワクの季節です。

引き続き夜明け前の東から東南東の空では惑星たちの競演が繰り広げられています。1日はひときわ明るい木星と金星が大接近。30日には火星と木星が最接近します。明けがたはもう3時台と早くなっていますが、ホトトギスが鳴きながら飛ぶ姿も見つけられるかもしれません。

  ホトトギス鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる

百人一首で知られるこの歌、今年は5月中旬以降に出会えるかもしれない光景です。

ホオノキ

   アゲハ

   ホトトギス



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています