ヤブツバキ古(いにしえ)より~ふれあいの里だより令和6年2月号~
あしひきの八つ峰(を)の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君
―万葉集 大伴家持―
万葉の昔から山に自生している椿を庭に植栽したことがうかがえる歌ですが、椿は日本最古の庭木と言われ、日本書紀には天武天皇に献上したという記述もあります。神聖な木とされてきましたが生活にも使われ、縄文時代の遺跡から櫛や石斧の柄が見つかっています。
ツバキというのは総称ですが、ヤブツバキの別名にもなっています。
ヤブツバキは本州、四国、九州、沖縄の海沿いに多く自生し、山地にも生えています。常緑高木で高さ5メートルから6メートルになります。
日本に自生するツバキはヤブツバキ、ヤクシマツバキ、ユキツバキの3種で、多くの園芸品種があります。
ヤブツバキは11月ころから4月ころまで咲き、花の色は赤で、まれに淡紅色や白色のものもあります。花弁の質は厚く5個で平開せず先端はへこんでいます。おしべは多数あり、下半部は合着して筒状になり基部は花弁と合着しているので花はぽとりとそのままの形で落ちます。これが打ち首を連想させるので武士に忌み嫌われたという説がありますが、むしろ江戸時代には将軍や大名、公家などが園芸を好んだことから多くの園芸品種が作り出され庶民にも広まりました。茶道でも茶花の女王の異名を持っています。ただ現代ではお見舞いや退院祝いに送るのはタブーとされています。
多くの園芸品種のもととなったヤブツバキですが、花をめでるだけではなく種子からは椿油がとれ、心材、辺材、建築材。生木の灰は媒染剤となります。
直径2センチメートルほどの丸い果実は熟しても緑色でやがて3つに裂開すると中から普通3個の茶色い種子が顔を出します。木化した中軸の周りに球状に集まって種子は付き、形は不定形になっています。裂開した果皮は堅く形も美しいことからアクセサリーにもされます。
花も虫も少ない時期に開花するヤブツバキ。わずかにいる虫たちの人気を集めるのはもちろんですが受粉を助けてくれるのは小鳥たち。中でもメジロは最も頼りになる相手でしょう。花粉で顔を黄色くしたメジロは何とも愛らしいですが、蕾のうちから蜜を目当てにつついてしまうヒヨドリは花を楽しみにしている人間にとって厄介な存在です。
春の木と書く椿。中国では別の植物を表します。葉につやがあるところから名前がついたとされる説や葉が厚いところから厚葉木と呼ばれそのアが取れたなどの説があります。学名はCamellia japonicaですがそのまま英名にもなっています。
生の花をそのままてんぷらにするとおいしいとか。見ても食べても楽しめそうです。葉や種で笛も作れます。古くから子供から大人まで楽しませてくれている身近な木です。
明けの明星金星、夜半の明星木星この二つを楽しめるのは今月まで。15日には細い月と木星が接近します。24日は今年最も地球から遠い満月マイクロムーン。2月の満月はスノームーンとも呼ばれます。2月4日は『立春』明るい冬の星座から次第に春の星座へと主役は移り変わっていきます。
そろそろ野鳥たちも恋の季節に入り始めます。暖かい日には思いもかけないさえずりが聞かれるかもしれません。昨年はセンターエリアで咲き始めた河津桜に降る雪が見られました。暖冬の今年も油断は禁物かも知れませんね。足元にはオオイヌノフグリやコハコベ、早春の花が咲き始めています。
ヤブツバキ |
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