サカキ生きものたちを見守り~ふれあいの里だより令和6年12月号~
長く続いた残暑。かと思えば急に冬本番のようになったり秋らしくなったりとした11月でしたが今年もいよいよ残り少なくなりました。
12月のスタートも気温は高めになりましたが、7日は大雪で21日には冬至を迎えます。いよいよ冬本番へと向かう中、冬越しのために野鳥たちも集まっています。虫たちも植物もそれぞれの形で冬を越します。
短くなった紅葉を楽しむ期間、雑木林の木々も色づき落葉していきます。北風に震えるような落葉広葉樹の木々の枝とは対照的に常緑樹は緑の葉を付け寒さに耐えています。
サカキもその一つです。常緑高木のサカキは、本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄や東アジアに分布します。山地の照葉樹林内に生えますが、神社によく植えられ、神仏習合の名残から墓地にもよく植えられています。
狭山丘陵ではもともと自生はしていませんが、神社などに植えられたものが野生化しています。
神と木を合わせて『榊』で、これは日本で作られた漢字です。名前の由来には諸説ありますが、葉が一年中緑で栄えていることから『栄える木』が転じてサカキとなった、神の世界と人間界の間に植える木『境木』からサカキになったなどの説があります。古来冬でも葉をつけている常緑樹は常盤木(ときわぎ)とも呼ばれ神聖視され神社などによく植えられて来ました。中でもサカキは神事には欠かせないものとされ、家庭でも神棚に供えます。奈良時代以前はその土地によって手に入る常緑のヒサカキ、シキミ、アセビ、ツバキなどを神仏に捧げ、総称としてサカキと呼んでいましたが平安時代以降、サカキと言えば今のサカキということになり、混同されないようにホンサカキやマサカキとも呼ばれるようになりました。
葉の表は光沢があり長さ7~10㎝、幅2~4㎝の長楕円形で、葉の先は突き出ていて先端は普通丸みを帯びています。縁には鋸歯がなく無毛です。葉の付け根につく冬芽は先端がとがり曲がっているのが特徴で、枝先のものは特に大きく鷹の爪のようだとも言われます。
花は初夏に直径1.5㎝ほどの白い5弁の花を咲かせ、後に黄色みを帯びてやがて落下します。その良い香りで開花を知ることもあります。また多くの花を訪れている虫たちの羽音でも気づかされます。
実は晩秋から初冬にかけて光沢のある黒紫色に熟します。直径は7~8㎜の球形で、種子は長さ約2㎜です。
狭山丘陵周辺では自生しているヒサカキをサカキの代用として使うことが多いのですが、ヒサカキは葉がサカキより小さく鋸歯があります。花も小さく独特の香りを発して早春に咲きます。ヒサカキは雌雄異株なので雄株には実が付かないものの、サカキより小さく黒紫色に実る実は野鳥に人気という点では共通します。
先に熟したヒサカキの実はすでに残り少なくなり、変わってまだたくさんあるサカキの実をついばみにメジロやヒヨドリがよく来ています。人が大切にしてきたばかりでなく、虫たちにも野鳥たちにも人気のサカキ、なんだかおおらかに見守ってくれているようにさえ思えます。
来る新しい年、神社に初詣をされる方も多いかと思います。玉串に使われているのはもちろんですが、緑の葉を茂らせすっくと立っているサカキの木が見つかることでしょう。
冬の代表的な星座が見やすくなってきました。夕方から西の空に明るく見える金星、宵に東の空から登ってくる木星。火星も明るさを増しています。5日には細い月と金星が、18日の宵から19日の明け方にかけては月と火星が接近します。14日の宵から15日の明け方には月と木星が並び、15日に昇ってくる月は今年最後の満月、コールドムーンとも呼ばれます。寒さが本格的になっていく時期です。体調管理には十分に注意をして良い年を迎えられますように!
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