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丘に広がる銀河 オカトラノオ(所沢市HP「ふれあいの里だより令和元年6月号」より)

5月に連続して真夏日を記録しましたが狭山丘陵はこれから梅雨入りを迎えます。

それぞれ可憐な白い花を咲かせていった木々は一層緑を濃くしています。森は花の季節から緑の季節へとなりました。草本の花も春に比べ少なくなっては来ましたが、7月にかけて白い花を咲かせるのがサクラソウ科のオカトラノオです。

オカトラノオは北海道から九州の、丘陵の日当たりの良い草地に生える多年草です。茎や葉には細く短い毛がまばらに生えています。丘に咲いていて花穂が垂れる姿を虎の尾に例えて名前が付きました。群れは形成しない虎ですが、オカトラノオは細長い地下茎を伸ばし増えるので普通群生します。英名のGooseneckはガチョウの首の意味です。虎と鵞鳥随分違いますね。

草丈は0.6メートルから1メートルで、直径8ミリメートルから12ミリメートルの小さな花を穂状につけ、上の方は傾き一方に偏って咲きます。白いつぼみの頃も美しく、下から咲いていく様は毎日見ていて飽きません。一つ一つの花は星型をしていて一面に咲いているところはさながら銀河といったところでしょうか。

夏が近いと告げるかのように咲き、風に揺れる風景は蒸し暑い季節に一服の涼風を運んでくれるようです。秋には紅葉し、冬は地上部が枯れます。

湿地にはよく似たヌマトラノオが咲きますがこちらの花穂は直立し、花も少しまばらにつきます。

オカトラノオを食草とするチョウはいませんが、その名もずばり、オカトラノオヒメハマキというガの幼虫はこの葉を食草とします。とは言え開長13ミリメートルから15ミリメートルの成虫、幼虫の姿を見つけるのは難しそうです。

木本ではムラサキシキブが甘くもさわやかな香りを漂わせながら紫色の花を咲かせ、リョウブがやはり夏が近いと告げるかのようにオカトラノオとよく似た白い穂状の花を咲かせますが、オカトラノオの学名はLysimachia clethroidesで、clethroidesは、リョウブ属に似たという意味です。なお、Lysimachiaは、マケドニアのLysimachion王が、猛り狂った牡牛に襲われたときに、この植物を振ったら牛が鎮まったといわれる伝説に基づいてつけられています。

派手さはありませんが草本もドクダミ、イチヤクソウ、ギンリョウソウが足もとに白い色どりを見せてくれています。

そろそろホタルの便りも聞かれ始めるころ、ホタルガの姿も見られるようになってきます。この時期を代表するアカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミなどのミドリシジミの仲間『ゼフィルス』たちだけでなく、ミドリヒョウモン、アゲハなどチョウの種類もたくさん見られます。オカトラノオの花にはチョウはもちろん多くの昆虫たちが吸蜜に訪れます。

エナガやシジュウカラ、ヤマガラなどの幼鳥の声も聞こえてきます。夏を前に多くの命が輝く6月です。

  オカトラノオ

 ムラサキシキブ

  ホタルガ



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています