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野老飾る

(所沢市HPふれ里だより平成25年1月号」より)

ほうらい(蓬莱)の 山まつりせん 老(おい)の春

これは蕪村の句ですが、蓬莱は、新年の飾りとして、床に飾ったりするもので、三方の上に、白米、熨斗鮑、伊勢海老、勝栗、昆布、野老、橙などを盛り付け、仙境、蓬莱山になぞらえたものです。 野老と書いてトコロ。トコロは、オニドコロの別名でもあります。エビを海老と書くのに対して、肥厚して横に這う根茎にひげ根が多いのを野の老人に見立てています。

野老飾る』は春の季語にもなっていて、ひげ根を飾り、長寿を願ったと言われますが、所(所領)の安堵を願ったとも言われます。万葉集にも『冬薯蕷葛(ところづら)』として出てきて、永遠性を引き出す言葉として使われています。
また、『野老掘る』は初春の季語とも秋の季語ともなるようで、食用などのためによく掘られていたようです。サポニンが含まれ、魚毒性があり、魚の漁にも使われていました。食用にするには灰汁で煮、水にさらし、煮込んで食べたようです。今また、コレステロールを抑えたり、血中脂質を低減させるとかで健康食品として注目されていますが、独特の風味、苦みがあり、あまりおいしいものではなさそうです。

所沢の地名の由来のひとつに、在原業平が、「この地は野老の沢か?」とつぶやいたことからという説がありますが、所沢市章はオニドコロの葉を図案化したものです。
オニドコロは、雌雄異株のつる性の多年草で、山野にごくふつうに生えます。ハート型の葉が互い違いにつき、7月~8月、雄花は上向きに、雌花は下向きに小さな淡緑色の花をたくさんつけます。咲きながら次々に若い実をつけていくので雌株と分かります。花言葉は『子だくさん』とか。

庭や公園などではロウバイや早咲き品種の椿が光の春を告げてくれていますが、寒さはこれから本格的になります。
個性豊かな冬芽や樹皮、地面に張り付くように冬を越している草本のロゼット。ヤブコウジやカラタチバナの赤い実。冬の森に花はほとんど見られませんが、冬ならではの楽しみがあります。
成虫で冬を越している、ウラギンシジミやキチョウ。姿をみつけるのはむずかしいですが、どこかで春を待っています。
キクイタダキやヒガラなど、この冬は野鳥もうれしい目撃情報が届けられています。


オニドコロ雌花

オニドコロ雄花

ウラギンシジミ



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