程よい幸せ、十両、百両
(所沢市HPふれ里だより平成26年1月号」より)
真冬並みの寒波に見舞われた師走でしたが、1月はまさしく冬本番です。
コナラやクヌギもすっかり葉を落とし、見通しがきくようになった林内を、シジュウカラ、コゲラ、メジロ、ヤマガラ、エナガなどの混群が飛び交う姿が見られます。
豊作だった木々の実も地面に落ちたり、野鳥のエサになったり、少なくなりました。それでも足下のヤブコウジやカラタチバナの赤い実はまだそのまま残っています。
ヤブコウジは、常緑の小低木で、高さは10~20㎝。学名はArdisia japonica。北海道、本州、四国、九州と、朝鮮半島、中国、台湾に分布します。
7~8月に直径5~8㎜の白い小さな花を葉の下で下向きに咲かせ、秋に熟した実は花が咲くころまで残ります。
庭木として植えられ園芸品種も多く、鉢植えはお正月飾りに使われます。
消(け)残りの 雪にあへ照る あしひきの
山橘(やまたちばな)を つとに摘み来な
万葉集にはヤブコウジを詠んだ歌が5首ありますが、これは大伴家持の歌です。当時は山にある橘といったことから山橘と呼んでいたようで、消え残る雪に照り映えるヤブコウジをちょっとした手土産に摘んで来ようといった意味の歌です。
源氏物語の浮舟の章にも長寿を祝うものとして登場し、江戸時代には子供の髪結初(かみおき)を祝って、ヤブコウジの茎葉を髪に挿したり銚子に刺したりし、江戸琳派の画家たちは特に好んでヤブコウジを描きました。
ヤブコウジは柑橘類の柑子(こうじ)に葉や実が似ていて、ヤブに自生することから藪柑子と付いたと言われます。
カラタチバナは、やはり常緑の小低木で、高さは20~70㎝。学名はArdisia crispa、英名はJapanese-hollyです。本州の茨城県・新潟県以西、四国、九州、沖縄と、中国、台湾に分布します。
7月ごろに、直径7~8㎜の白い花を斜め上に伸ばした枝先に散形状に、10ほど咲かせます。11月ごろ赤く熟した実は4月ごろまで残ります。
庭木として植えられ園芸品種も多く、やはり鉢植えをお正月飾りに使います。
もともと数の多いものではなく、このあたりでは本来分布していませんが、庭木として植えられていたものが、実を食べた鳥に運ばれるなどして増えたものが見られ、センターエリアでは特によく見られます。
和名の由来はカラタチの花に似ているからとかいくつかありますが、どうもはっきりしないようです。
ヤブコウジは別名十両、カラタチバナは百両です。千両や万両より現実味のある、程よい幸せは足元で微笑んでいます。
ヤブコウジ カラタチバナ メジロ
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