水辺で優美に、アオサギ(所沢市HPふれ里だより平成29年7月号」より
白百合のしろき畑のうへわたる 青鷺づれのをかしき夕べ(与謝野晶子)
この時季目を引くのはやはりヤマユリの白い花。林縁には明るいオレンジ色のヤブカンゾウも咲いています。足下には小さなジャノヒゲやヒメヤブランの花。
梅雨空の下、花は多くはありませんが、木々の緑は濃く、恵みの雨は森を育ててくれます。
与謝野晶子が詠んだアオサギは夏の季語。このあたりでも今では1年中みられますが、かつては渡りをしていて、夏によく見られたところから夏の季語になったとか。
アオサギは四国以北で繁殖し、冬は暖地に移動する、国内最大のサギで、全長93㎝、羽を広げると160㎝あります。長い首と足をしていますが首は縮めていることが多く、飛ぶときは首をZ型に縮めます。この飛ぶ姿が独特で、数々の伝承などのもとになった要因の一つかもしれません。グワーッと濁った鳴き声も相まってか聖、邪両方のモデルになっているようです。
日本以外ではユーラシアとアフリカにいるアオサギ。エジプト神話では舞い上がり、輝き、再生する聖鳥べヌウのモデルとされ、壁画にも描かれています。さらにはフェニックスのモデルになったとされます。
体の上面は青みがかった灰色をしています。学名は Ardea cinerea、英名はGrey Heronで、どちらも灰色のサギという意味になります。『緑』ではなくアオゲラ、青葉、青信号の例もありますが、日本の伝統色としては400以上あるものの、古代では黒赤青白の4色だったことから青鷺とついたようです。とは言えアオサギの体色に青を見た観察眼も鋭いと言えるのではないでしょうか。ちなみにエジプトの死者の書に描かれているベヌウは青い体をしています。
アオサギは水田、湖沼畔、干潟などに棲み、主食は魚でじっと獲物を狙っています。時にはエビやカニ、昆虫も食べ、ネズミや水鳥のヒナを食べることもあります。水辺で静かにたたずむ姿は優美でもあります。
営巣は基本的には集団で行い樹上に小枝を粗に組んだ巣を造ります。よくツルが松の枝などに止まっている絵がありますが、これはアオサギを間違えたものと思われます。近年営巣地の拡大や数の増加に伴い、魚の養殖場や水田などで害鳥となっていることもあります。稲作文化のせいでしょうか日本ではアオサギは妖怪のモデルになっているようです。
ニイニイゼミが鳴き始め、梅雨明けが気になるところですが、今年の梅雨はしとしと降るタイプでは無さそうなので、豪雨被害が心配です。
七夕の日、今年は二十四節気の小暑でもあります。暑中となり暑さが増していくころとなります。30日は夕方の西の空に水星が太陽から一番離れて見やすくなります。暗くなり始めるころヒグラシの合唱が始まります。夜にはヘイケボタルが舞い、昼にはホタルガが舞います。
シジュウカラの若鳥たちの群れがねぐらへ戻る前ににぎやかにえさを獲っているところに出会うかもしれません。
昼間白百合にはクロアゲハやカラスアゲハが、香りを強めた夜にはガの仲間たちが訪れていることでしょう。
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