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ハグロトンボ、幽玄、神秘、林の中で(所沢市HPふれ里だより平成29年6月号」より

今年の6月5日は芒種で実際はもう少し早く蒔かれていますが稲などの種蒔きをするころとされ、11日は入梅、21日は夏至で、今月は梅雨入りと田植の月と言えます。暗いイメージがありますが太陽は一年で一番高く輝いています。

強い日差しの下きらりと光る翅と体。ふわりと飛んできては葉の上に翅を休める黒いトンボはハグロトンボです。

ハグロトンボは本州、四国、九州、種子島、屋久島の低山地、丘陵、平地の水辺に水生植物が繁茂している緩やかな流れに発生し、池沼にも発生します。成虫は5月から10月頃まで見られ、7月、8月が一番多く見られます。羽化した成虫は薄暗いところを好み林の中で暮らすので、センターエリアでは6月ころに出会えます。成熟すると水辺に戻るので、林の中で出会える唯一の季節と言えるでしょう。

オハグロトンボ、神様トンボ、仏トンボ、極楽トンボなどの別名を持ちますが、お歯黒の色に似ていたからなど、どれも翅の色形から来ているようで、薄暗いところをふわふわと飛ぶ黒いトンボに、幽玄さ、神聖さを感じたようです。

水辺では群れていることが多いのですが、林の中で出会うのは単独の場合がほとんどです。翅をそろえて止まったかと思うと、まるでチョウのようにはらりはらりと翅を閉じたり開いたりします。金属光沢を帯びた黒い翅が光の加減で虹色に輝いたりさまざまな色で輝いたりする姿を見ると改めて『黒』の奥深さを感じます。雄の身体が金属光沢を帯びているのに対して、雌の身体は黒く、翅はこげ茶に近い色をしています。

コオニヤンマやシオカラトンボなどが素早く飛び回り昆虫をとらえているのに比べこんなにふわふわしていてエサが採れるのか心配になってしまいますが、意外と俊敏で近づくとすいっと飛んで行ってしまいます。

梅雨の晴れ間、ちょっと神秘的なハグロトンボに林で出会えたらいいことがありそうな気持ちになります。

トンボは全国的に減少しているようですが、ハグロトンボも水質汚濁、河川改修などで数を減らしているようです。水辺のヨシなどで羽化するハグロトンボ、河川改修ではヨシなどは根こそぎ刈られてしまいます。産卵するのも水中の草の根際や水草などです。人にとっては害虫を食べてくれる益虫で、『勝ち虫』と呼ばれ縁起が良いとされてきたトンボたち。コンクリ―トで固めない、水辺の生きものに配慮した河川改修工事も少しずつ進んでいます。これからもトンボたちと共存していきたいものです。

年に1度のゼフィルスの季節も始まっています。ハグロトンボよりアカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミが葉の上で休んでいる姿を見かけることの方が多いことでしょう。

雨に濡れながらうつむいて咲いているのはイチヤクソウやホタルブクロ。ドクダミやオカトラノオも咲いています。爽やかな甘い香りはムラサキシキブの花。小さな虫たちが花々に集まっています。

梅雨の雨は恵みの雨。植物は繁り、たくさんの命が息づいている6月の森です。南の国から帰って来たカッコウやホトトギスの声も聞こえてきます。


ハグロトンボ

ウラナミアカシジミ

ムラサキシキブ



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています