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初夏の訪れウツギの花(所沢市HPふれ里だより平成29年5月号」より

5月は旧暦ではほぼ4月、卯月にあたります。卯月に花が咲くことから卯の花の別名があるのがウツギです。枝には髄がありますがすぐに中空になることから空木と付いたとされます。

ウツギは日本全国の日当たりのよい山野の林縁や川沿いなどに生える落葉低木です。枝が混みあい切ってもすぐに芽吹くことから垣根に良く用いられ、畑の境界などに境木として植えられもしました。

国宝の志野茶碗に『卯花墻(うのはながき)』がありますが、

春されば  卯の花ぐたし  我が越えし

   妹が垣間(かきま)は 荒れにけるかも

と万葉集にも歌われ、これは最古のウツギの生け垣が出てくる文献です。江戸名所図会には『所澤卯花』があり、ウツギの垣根が描かれています。ところが今はウツギの生け垣は目にすることはほとんどありません。替わってハナゾノツクバネウツギ(アベリア)が公園やあちこちの植え込みで見られるようになっています。流行り廃りということでしょうか。

 

花の時期が田植えの時期と重なることから『田植え花』と呼ばれるところがあったり、『田を打つ木』として正月や田植えの時期に豊作を願って飾られたりするなど古くから稲作と深い結びつきがあったウツギ。打つ木からウツギになったという説もあります。また、正月に災厄を祓う行事に使われるなど民俗行事などにも縁が深いようです。

 

万葉集には24首読まれていて、そのうち半分以上がホトトギスとセットで読まれています。『夏は来ぬ』の歌詞も「卯の花の匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて」と始まります。日本人は古くからセットで季節を感じてきたのですね。

この時期走り梅雨と言われる長雨が降ることがありますが、これを『卯の花腐し』とも言い、ウツギの花が腐ってしまうのではないかとの憂いが感じられます。卯の花は初夏の季語で、数多くの歌が詠まれています。

季節と密接なつながりがあるウツギ。密接な関係は花だけではなく材は強靭で木釘として使われてきました。幹を加工した木釘は桐のタンスには欠かせないものです。

食で言えば、おからのことを卯の花とも言いますが、白い花が集まって咲くところが似ているからとか、おからが空木の空につながるからとも言われています。

 

コゴメウツギ、ツクバネウツギ、バイカウツギ、マルバウツギ。ウツギと名の付く白い花がいろいろと咲く初夏です。

ウツギにはクロアゲハやジャコウアゲハなどのチョウをはじめ多くの昆虫たちが吸蜜に訪れます。人はともかく虫たちには今も大人気です。

 

太陽にいちばん近くなかなか見る機会の少ない水星が今年2回目の見やすい時期がきます。5月18日の前後、少し早起きして夜明け前の東の低い空を探してみてください。ひときわ明るい金星を頼りにさらに地平線近くです。渡って来たホトトギスの声も聞かれるかもしれません。

アカシジミをはじめ年に1度のゼフィルスの季節も始まります。

ウツギとともに田植えのころを知らせるかのようにナワシロイチゴも花を咲かせる頃となりました。


ウツギ

アカシジミ

ナワシロイチゴ



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