花から花へ、ミドリヒョウモン(所沢市HP「ふれあいの里だより平成30年6月号」より
初夏の白い花の季節が駆け足で過ぎ去り、今年は夏も早く来るとの予報。それも酷暑が。チョウの発生も少し早くなっているようです。
5月下旬から6月にかけてはミドリシジミの仲間の一群、ゼフィルスたちの年に1度の発生時期です。センターの周りでは今年もアカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミがすでに確認できています。
この時期やはり年に1回発生するのがミドリヒョウモンです。ミドリヒョウモンは北海道、本州、四国、九州に分布するチョウで、ヒョウモンチョウの仲間は草原性のものが多い中、やや山地性で林縁部を好みます。幼虫の食草は、スミレの仲間です。
翅の斑紋から『ヒョウモン』とつき、後翅裏面が緑色で淡い白色の縦じまがあるところからほかのヒョウモンチョウとは区別が付き、名前の由来にもなっています。
狭山丘陵では近年急速に分布を北へと広げたツマグロヒョウモンが多く見られますが、ミドリヒョウモンはそれについで見かけることが多いヒョウモンチョウの仲間といえます。いろいろな花で吸蜜しますが白い花を最も好むようでリョウブやネズミモチの花によく来ます。真夏には休眠し、9月ころ再び活動を始め、10月ころまでみられます。そのころ咲いているアザミ類や園芸種のブットレア、アベリアなどを訪れ、センターエリアではコウヤボウキによく来ます。
移動性の高いチョウで、夏場は避暑をかねてかどうかはわかりませんが休眠せず、平地よりたくさん花が咲いている山の方へ移動し、各種の花を回っているとの説もあります。秋には平地の開けた所でもよく見かけるようになり、センター周辺では初夏より初秋の方が目にすることが多いので、これは山から移動してきた個体が多く加わっている可能性があります。北海道などの寒冷地では7月に入ってから出現し、9月下旬ころまで夏眠せずに活動を続けます。
卵は食草付近の樹皮、露出した木の根や岩、地上の枯れ枝などに乱雑に産み付けられますが、近くに食草が無いことも珍しくありません。冬越しは卵か1齢幼虫でします。
リョウブの蕾もほころびかけてきています。初秋に出会うミドリヒョウモンは翅の傷んだものが多いので、きれいな個体との出会いが期待できるのは成虫になったばかりのこれからです。
コオニヤンマが素早く飛び回り昆虫を捕らえる姿が見られるようになり、足元ではギンリョウソウ、イチヤクソウ、オカトラノオなどの白い花たち。春から初夏に咲く唯一のアザミ、ノアザミも紅紫色の花をまだ咲かせています。ムラサキシキブの甘くさわやかな香りは梅雨時の清涼剤のようです。
今年は6月21日が夏至。1年で最も高く太陽は輝きます。恵みの雨を楽しむかのような植物たち、植物が元気だと昆虫も元気です。今年生まれたシジュウカラの若鳥たちの群れがせわしなくガの幼虫などを探して枝から枝へと移っていきます。
雨の中元気になる生きものも沢山います。降っても降らなくても多くの命が息づく森で生きものたちとの出会いを楽しみに散策してみてはいかがでしょう。
前の記事へ 次の記事へ