1. TOP
  2. いきふれ自然情報
  3. 秋の空の女王ジョロウグモ(所沢市HP「ふれあいの里だより平成30年10月号」より

ここから本文です。

秋の空の女王ジョロウグモ(所沢市HP「ふれあいの里だより平成30年10月号」より

ほとんど晴れる日のなかった9月。気が付けば日が暮れるのもずいぶん早くなっています。まさに秋の夜長が実感できるようになりました。澄んだ秋の空は昼も夜も楽しめます。

何をするにも良い季節。厳しい夏の暑さ、続いた残暑。森は疲れた心身を癒してくれます。何気なく見上げた空、視界に入ってくることがあるのはジョロウグモ。本州、四国、九州、南西諸島で街中の人家の庭から山地の林道、渓流まで広く見られるクモです。

初夏のころには未熟な個体が小さな網を張っていましたが、9月にもなれば立派な成体。樹間や草間に細かい目の円網を張ります。11月ころまでよく見られ『秋の空の女王』とも呼ばれます。

女王の名にふさわしく、派手な体で円網の中心にいるのはメスのジョロウグモです。よく見るとそばに地味で小さなクモがいることがありますがこちらがオスです。メスは体長20ミリメートルから30ミリメートル、オスは6ミリメートルから10ミリメートルとかなり差があります。

網を張るのはメスでオスは風に乗ってやって来ます。時には複数のオスがいることもあり、自分が餌になってしまわないようそれぞれメスのご機嫌を覗いながら子孫を残そうとしています。今年目についたのですが、まだ小さなメスの網にメスより大きなオスがいて、まるでメスの成長を待っているかのようでしたが、メスが最終脱皮をした時と食事中は交接のチャンスのようです。

網は主網の前後に糸を引き回したバリアーと呼ばれる網とで三重構造になっています。主網は成長と共に円網から下部が大きくなり馬の蹄みたいに見えるようになることから蹄形円網と呼ばれます。バリアーは食べかすや脱皮殻などがくっ付けられていていわゆるゴミ捨て場となっています。

光の加減で虹色に輝く美しい網はこまめに修繕、部分的に張り替えられます。網を食べ新しい糸をはき張り替える作業はやはり大変なこと。晩秋にはボロボロになったままのものが目につくようになります。体力を消耗するのでなるべく網は壊さないように歩きますがあまりに通行の妨げになるときはごめんねとはらいます。そうするとたいていの場合網はさらに高いところへ張られるようになります。人がよく通るところでは樹間の高いところに、まさに空の女王と言わんばかりに網を張っています。

獲物がかかると素早く近づきまず噛んで動きを止め、糸でぐるぐる巻きにします。人が噛まれても差し支えありませんが、微量の毒をもつので噛むことにより動きがとめられます。ぐるぐる巻きにした獲物は吊り下げ、少しずつ食べていきます。

南西諸島にはメスの体長が35ミリメートルから50ミリメートルで日本最大のオオジョロウグモがいますが、この網にはメジロくらいの小鳥がかかることもあるそうです。

女郎蜘蛛は、もとはその姿を大奥の高貴な女性に喩え上臈蜘蛛の字があてられていたとされます。

野鳥にほとんど襲われることもなく艶やかな姿で堂々と網の真ん中にいる女王さまはやがて産卵し一生を終えます。春にはまた小さな子グモたちが小さな網を張ることでしょう。

ガマズミやオトコヨウゾメの赤い実、赤く熟したゴンズイの果実は裂開し黒い種をのぞかせています。花が少なくなったこの時季コウヤボウキには多くの昆虫たちが吸蜜に訪れます。アカタテハ、ミドリヒョウモン、ツマグロヒョウモン10月はまだまだ蝶が数多く見られます。

18日は上弦を過ぎた月に寄り添う火星が見られ、21日は後の月、十三夜です。エンマコオロギ、ツヅレサセコオロギ、虫の音に耳を傾けながら星観望を楽しめる秋の夜長です。

  ジョロウグモ

  ゴンズイ

  アカタテハ



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています