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茶どころは花の季節(所沢市HP「ふれあいの里だより平成30年11月号」より

秋晴れの日が少ないまま晩秋となり、今年は11月7日が立冬。七十二候では11日までが山茶始開(つばきはじめてひらく)となります。ここでいうつばきは山茶花(さざんか)のことで、葉がお茶のように飲料になることから『山に生える茶の木』ということで名前がついたとされ、園芸品種が数多くあります。

本家本元の茶の木も10月ころから花の季節を迎えています。
チャノキは日本には奈良時代に中国からはいり、薬用として利用されていましたが、鎌倉時代に栄西が中国から種子を持ち帰ったことから栽培と喫茶の習慣が広まり始めました。
常緑低木で、高さ2メートルほどになりますが、茶畑では、葉を摘みやすいように低く手入れされています。また、低木性で葉が小さいシネンシスと高木性で葉が大きいアッサムがあり現在日本で栽培されているのはほとんどシネンシスの系統です。
葉が主役のチャノキ。花が咲くとは思っていない人も少なくないようです。チャノキはツバキ科で、直径2~3センチの白い花を下向きに咲かせます。花弁の数は5~7個、おしべは8~13ミリで多数あり、めしべは1個、上部で3つに分かれています。萼片は緑色で5~6個あり内側のものほど大きくなっています。よく見ると近くには去年咲いた花から実を結んだ茶褐色の果実がついています。熟すと3裂し、各室には1~2個の1.5センチ前後のほぼ球形で褐色の種子が入っていて、ほどなく地面に零れ落ちます。
『茶色』の語源は諸説ありますが、この実の色から来たという説もあります。実からは油も採れます。
チャノキの葉は染料にもなります。タンニンの作用で茶色に染まりますが、緑がかった色から鼠色まで方法により幅広い色調に染めることが出来ます。
狭山丘陵周辺は言わずと知れた『狭山茶』の産地です。でもこの時期拡がる茶畑が白いお花畑に…という風景は記憶にありません。それもそのはず、木にとって花を咲かせ実をつけるということはやはり負担になります。良質の茶葉を収穫するためには避けたいものなので、茶畑ではあまり花を咲かせないように手入れがされています。
この辺りは武蔵野台地で表土は軽く、チャノキは生垣としても植えられ、風害や、土の流出を防いできました。かつては人家があったようなところに野生化したチャノキが見られることもあります。ほのかに香る白い可憐な花がそんなところでは弱弱しくなってきた日差しの中で輝いていることでしょう。

ルリタテハやアカタテハ、キタキチョウなどの成虫越冬をするチョウたちの姿はまだ目にすることがあるもののそれ以外はヤマトシジミやチャバネセセリがわずかに見られるくらいになってきました。チャノキの他見られる花はコウヤボウキにヤツデ、サザンカの園芸品種。これらの花にはチョウ以外にもまだこんなにいたのかと思うほど数々の小さな虫たちが吸蜜に訪れています。
モズの高鳴きや冬越しにやって来たジョウビタキの声。野鳥たちの声がにぎやかになって来ています。
春には桜前線が注目されましたが今は紅葉前線が気になるところです。木々にはまだ赤や紫、黒それぞれ鳥に種を運んでもらおうと稔った実が残っています。
本格的な冬も間近な限られた時間、最後の輝きを見せるかのように多くの命がつながれていくころとなりました。

   チャノキ

  ヤマトシジミ

   ガマズミ



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