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冬を越すバッタ、クビキリギス(所沢市HP「ふれあいの里だより平成30年12月号」より)

師走の声を聞くとどうも落ち着かなくなるようですが、野鳥たちも落ち着かないようです。冬越しのためにやってきたジョウビタキやアオジ、ヒヨドリやシジュウカラも数が増えています。藪の中からはウグイスの「チャッチャッ」という地鳴きも聞こえてきます。まだ移動中のものもいてざわざわしています。
鳥たちは賑やかですが虫はほとんど目にしなくなってきました。ニトベエダシャク、クロスジフユエダシャクは今年も11月から発生し、成虫越冬をするムラサキシジミが陽だまりで翅を広げていることもあります。
弱弱しいコオロギの仲間の声も少しは聞かれますが、ほどなく姿を消します。冬には草も枯れ、バッタの仲間もいそうにありません。そんな中、成虫で冬越しをするバッタがいます。

それはクビキリギスで、バッタ目キリギリス科の体長57ミリから65ミリ、本州、四国、九州の林に隣接した草原などに棲む昆虫です。
恐ろしげな名前ですが、顎の力が強くて一度かみついたら離さず、無理に引っ張ると首が抜けてしまうことから付いたとされます。雑食性のキリギリスの仲間は強い顎を持っていますが、とりわけ強いということでしょうか。顎の関節が細く、頭頂部寄りにあるのでまっすぐ引っ張ると抜けやすいようです。

主食はエノコログサなどイネ科の植物で、市街地や都市化されたところにも生息します。10月ころ羽化し冬を越したのち春先「ジーー」という連続した声で鳴き始め、5月ころから産卵します。
バッタの仲間といえば夏や秋に鳴くものが大半の中、春いち早く大きな声で鳴き始め成虫越冬するという異色の存在です。薄茶色のものと緑色のものがいますが、これは終齢幼虫でいた環境により、乾燥した草地の場合は薄茶色に、湿り気のある草地の場合は緑色になるようです。成虫になってから移動しても色は変わりません。
まれにピンクの個体が発生しニュースになることもあります。これは色素異常の一種でクビキリギスは体内にピンクの色素も持っていて何らかの理由でその色素だけが出たものとみられています。また、メスだけでも繁殖できるので環境によってはピンクの個体が増殖する可能性もあります。

口の周りが赤いのもクビキリギスの特徴で、見分けるときの重要なポイントになります。血吸いバッタという別名はここから来ています。なんだかどちらの名前も恐ろしげで気の毒なようです。
枯草の中などで冬を越すクビキリギス。動きも鈍くなっていて観察しやすいので見つけたらそっと見守ってあげてください。早春の夜、時にはうるさいくらいに聞こえてくる鳴き声に春の訪れを感じる日を経て7月ころまでは成虫の時を過ごす長寿のバッタです。時にはもう一冬超すものもいるとか。

狭山丘陵は紅葉(黄葉)のピークを迎えています。紅く色づいた葉に目を引かれ見てみるとつやつやした赤い実がまだ残っているオトコヨウゾメ。初頭の陽ざしに朱色に輝くのはすでに葉を落としたヒヨドリジョウゴの実。足元にはヤブコウジの赤い実も見られます。ムラサキシキブの紫、スイカズラの黒い実も残っています。
急ぎ足で冬装束になっていく雑木林。「また春に…。」とほほ笑んでいるようにも思えるころとなりました。

  クビキリギス

  ニトベエダシャク

  ヒヨドリジョウゴ



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています