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月の光とオシドリと(所沢市HP「ふれあいの里だより令和元年9月号」より)

9月といえば残暑はいつまで続くのか、秋雨前線はという話題が多く聞かれます。今年は9月1日が二百十日、防災の日でもあり、台風が気になるところです。8日は『白露』、13日が『十五夜』で、23日は『秋分の日』と秋本番を感じます。

気をつけて見ると思わぬところにも秋を見つけることができます。この辺りには冬越しにやってくるオシドリも9月ころから雌雄見分けのつきにくいエクリプスだったオスが色鮮やかな冬羽へと変化し始めます。そしてよく知られる雌雄寄り添う姿が見られる季節へとなっていきます。

妹に恋ひ寝(い)ねぬ朝明(あさけ)に鴛鴦の

ここゆ渡るは妹が使(つかひ)か

これは万葉集にある柿本人麻呂の歌ですが万葉集には他にも3種詠まれています。浮世絵にもしばしば描かれ伊藤若冲をはじめ日本画にもよく描かれてきました。古くから日本人に親しまれてきたオシドリ、実際に見たことのある人は少ないかもしれませんが、その姿は多くの人が思い浮かべることができるのではないでしょうか。

オシドリは東アジアに生息し日本では北海道、本州、九州の平地から山地の水辺で繁殖し、冬は関東以西の森林に囲まれた湖沼、渓流などに群れで生息し、都市部の公園でも見られます。他のカモ類とはあまりなじむことはなくオシドリだけで群れています。夜行性で昼間は木陰の水面や水辺の樹上などで休んでいます。

雑食性で水生昆虫や魚なども食べますが主に植物性のものを食べ、ドングリが好物です。

仲の良い夫婦のことを『鴛鴦夫婦』と言いますが、冬から春にかけてオシドリの雌雄がぴったり寄り添うようにいるところから来ています。鴛鴦という名前も鴛はオスのオシドリ、鴦はメスのオシドリを表し、『相思相愛(を)し』からきていると言われます。絵から飛び出たようなオシドリのオスと地味なメス。オスの換羽が完成すると、メスの近くへ寄っていき、飾り羽を使って求愛行動としてダンスを踊ります。ペアが形成されると繁殖期の4月から7月はまさに鴛鴦夫婦のようですが、大木の高い位置にある樹洞を巣にし、抱卵中は巣の近くでオスが警戒していますがひなになるとオスは離れていきオスばかりの群れになっています。

こうして毎年ペアが解消されるのですが、同じ雌雄が毎年ペアになっているという調査結果もドイツで出ているようです。ただドイツではオシドリは移入種、日本ではどうでしょう。

ひなは生まれて間もなくメスに続いて時には10メートル近くも下の地上に飛び降り、水辺へと向かいます。もちろん飛べませんがふわふわのひなはボールが落ちて跳ねるようでダメージはないようです。

国内で移動をするものが多い中、海を渡ってくるものもいます。これからの季節どこかで目にしたい美しい野鳥です。

チョウやトンボ、とりわけアキアカネに代表される赤とんぼたちを目にすることが増えますが、アオイトトンボの成虫が多く見られるのも8月から9月にかけてです。

十五夜に飾るススキやワレモコウが花を咲かせ、ヌスビトハギやネコハギ、キツネノマゴ、ユウガギク、秋草たちが静かに咲いています。赤と黒のコントラストが目を引くゴンズイ、紺色に色づいたエビヅルやアオツヅラフジなど実りの秋も訪れています。

野鳥たちは渡りの季節を迎えています。山から里へ、北から南へ国内でも移動しています。夏の間セミの声ばかりのようだったセンター周辺でも鳥たちの声が戻ってきました。

“月見る月はこの月の月”、夜はコオロギの仲間の鳴く虫たちの声がにぎやかになりました。月明りの下餌を探しているオシドリたちに会えるかもしれません。

オシドリ

  アオイトトンボ

   ゴンズイ

 



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています