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ヒメヤブラン、小さくも逞しく(所沢市HP「ふれあいの里だより令和2年月7月号」より)

木々は緑を濃くし、木の花が少なくなってきた中で、リョウブの白い花穂が目にさわやかです。

7月は七夕もあることから星空が気になるところですが、まだ梅雨のさなか、星を見ることもなかなかできません。そんな時期、足元に見られる小さな星のような花はヒメヤブランです。

ヒメヤブランはクサスギカズラ科ヤブラン属の常緑性多年草で、北海道西南部から沖縄の日当たりの良い草地や林縁に生えます。ヤブランの仲間で小さく可愛いことから名前が付いたとされ、ヤブランとヒメヤブランの間にコヤブランがあります。葉の幅でいうとヤブランから順に8から12ミリメートル、4から7ミリメートル、2から3ミリメートルとなっています。

花が咲いていないとジャノヒゲそっくりですが、ジャノヒゲの仲間が下を向いて花を咲かせるのに対してヒメヤブランは上向きに咲くのですぐにわかります。匍匐茎をのばして増えるのはコヤブランやジャノヒゲと同じながら、ジャノヒゲは花序が短いので花が葉に埋もれて目立たないのに対し、ヒメヤブランは葉の中に花が埋もれてしまうということはありません。群生しても密にならずに葉の間から花が顔を出しています。

ランの仲間ではないのに名前にランが付き、かつてはユリ科でしたがDNAの研究が進みキジカクシ科になり、最新の分類でまた変わりました。同属のヤブランよりは近縁種のジャノヒゲ属に見た目は似ていてとなんだかややこしい植物です。

身近な植物とはいえヤブランやジャノヒゲほど多くはなく見過ごされがちです。花数も少なめでまばらにつきます。それでも花茎をすっと伸ばしながら直径1センチメートルほどの淡紫色の花を上へ上へと咲かせていく姿は凛々しくもあり、足元に広がる小さな星々の川に気づくと美しさと可憐さにハッとさせられます。

6個のおしべは中央に寄り添い1個のめしべは自家受粉を避けるように上へ反り返ります。やがて丸い種子が露出したものを付け、緑色から黒色へと熟します。瑠璃色に熟すジャノヒゲとはこの点でも区別できます。

本物の星は、夕方一番星として輝くのは木星、次いで土星が輝き始めます。この時期一晩中この二つはみられます。七夕の主役の星たちは来月の伝統的七夕の頃の方がお天気もさることながら見やすい高さになります。金星は明けの明星として輝いているものの、7月の日の出の時間は4時半前後なので随分早起きする必要があります。

オニドコロやヤマノイモが雄株雌株それぞれ違った小さな花を咲かせ、ヤマユリは芳香をあたりに漂わせながら存在感たっぷりに咲いています。同じく人も虫もその香りで惹きつけながらクサギが咲いています。

梅雨明けを知らせるかのようにヒグラシ、ニイニイゼミが鳴き始め、アゲハチョウ、クロコノマチョウ、ヒメウラナミジャノメなど、チョウは数多く、虫たちは最も盛んに活動する時季になりました。若鳥たちが元気に飛び交い、まだ子育て中の親鳥たちもしきりに虫を捕っています。

木々は虫たちに抵抗する森の香りを多く発散するようになってきました。春には敬遠されがちだったスギやヒノキは特に多く発散させます。癒し効果のある空気を胸いっぱいに吸い込んで深呼吸。

息を吐き視線を足元にやると、6月から初秋のころまで咲いているヒメヤブランの花が見上げているかもしれません。

ヒメヤブラン

 

   ヤマユリ

   ヒメウラナミジャノメ

 



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