コオニヤンマ、獰猛なハンター~ふれあいの里だより令和3年7月号~
梅雨入りが遅かった狭山丘陵周辺ですが、春からずっと早かった花の開花が今も続き、6月中にリョウブが咲き終わろうとしました。森はいよいよグリーンシーズンです。
木や草の葉の上などでさながら獲物を狙う猛獣のように止まっているトンボはコオニヤンマです。日本最大級のトンボ、オニヤンマに似ていて少し小さいところから名前がついたとされますが、オニヤンマはオニヤンマ科でコオニヤンマはサナエトンボ科。類縁関係は離れています。オニヤンマは木の枝などにぶら下がるように止まり、コオニヤンマはうつ伏せ型、あるいは枝先つかみ型で平らに止まります。ヤゴの姿に至っては細長い体形に糸状の触角のオニヤンマに対し幅広で扁平、触角はへらかしゃもじのようで全く違います。ほかの水生昆虫などを捕食して育ち2年から4年かけて成虫になります。もし羽化の瞬間に出会えたら、平たい腹部から抜いた時にはすでに細長い腹部になっていることに驚くことでしょう。
学名も勘違いされてつけられていて、記載者が、ボルネオ産の類似種と標本を取り違えたまま新種として発表したため、ボルネオ産のものがjapponicus(日本の)として記載され、日本産のコオニヤンマが日本と関係ないalbardaeとして記載されてしまいました。いったんつけた学名は手違いでは訂正できないということで今に至っています。
コオニヤンマは日本全国の平地から山地のやや幅広い河川や小川に生息する、サナエトンボの仲間では日本最大級のトンボです。成虫は5月から10月ころまで発生します。羽化後丘陵や山へ移動し、産卵のため河川に戻るという生活を送るので、センターエリアでは6月から8月くらいに目にします。
頭が小さく後ろ脚が長いのが特徴で、オスにくらべメスの胴は太く立派です。複眼は深緑色から成熟すると澄んだ緑色になり、左右が離れています。左右の複眼が接しているオニヤンマとはこの点でも区別ができます。また、オニヤンマは胸の前に八の字模様があるところも決定的な違いです。
冒頭に書いたように腹を水平にして止まっていたかと思うと、獲物を見付けるや否や素早くとびかかります。これがかなり獰猛で、オニヤンマも餌にされてしまうことがあります。獰猛なハンターはやがて成熟して川へと子孫を残すために戻って行きます。
木々の緑が最も盛んな時、せっせと光合成をし、力を付けます。そして同じく最も活動が盛んな虫たちに対抗するためにフィトンチッド、いわゆる『森の香り』を発散させます。緑に溶け込むようなオニドコロやヤマノイモの小さな花、ヤマユリやクサギは芳香で虫を誘っています。この香りは人も惹きつけられる香りです。鮮やかな色で目をひくのはヤブカンゾウの花。
6月から鳴いているニイニイゼミに続き、梅雨が明けるころにはアブラゼミが暑さを謳歌するかのように鳴き始めます。多くのチョウの姿も見られるようになります。
この春巣立った若鳥たちで群れをつくっていたシジュウカラ。ほどなく2回目に巣立った若鳥と、子育てを終えた親鳥たちも共に行動するようになります。
7月13日は夕方の西空で金星と火星が並びます。さらに高いところには細い月。七夕の日だけでなく、夜空も楽しみです。
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