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かつては珍鳥オオバン~ふれあいの里だより令和3年10月号~

10月、季節は晩秋となります。1日は衣替えですが木々の装いも日ごとに変わっていきます。野鳥たちも冬に備えて移動しているものがたくさんいます。

狭山湖にはカンムリカイツブリやマガモなどが冬越しのために渡ってくるようになります。オオバンもかつては冬鳥として知られていました。

オオバンはツル目クイナ科で、全長39センチメートル。一見するとカモの仲間のようにも見えます。体全体が黒色で、くちばしと額が白色。水かきはなく指にひれのある特異な弁足を持っていて、葉っぱのように見えます。1年を通して見た目は変わりませんが、暗緑青色の足は冬期や若鳥は鉛色を帯びます。

植物よりの雑食性で、泳ぎながら水草や水棲昆虫などを食べ、陸へ上がって草を食べたり水に潜って水底の水草を食べたりします。足は長めで歩くのが得意そうに見えますが実は苦手でほとんど水上で生活しています。水面を長い距離助走して飛ぶ姿は水の上を走るようです。ずんぐりした体の割に潜水も得意で運動能力は優れています。とは言え首を前後に振りながら泳ぐ姿には必死さも感じられます。

湖沼や緩やかな河川など草の繁茂した水辺に生息し、50年前までは北海道から東北地方、関東の千葉県行徳までで繁殖をしていました。今はほぼ全国で繁殖しています。

バンより大きいところからオオバンと名前がついたとされますが、この辺では40年ほど前からオオバンが数を増やし、バンの方が見る機会が減って来ました。浅い水場を歩き採餌をするのが基本で、水田とその周辺の灌漑用水路が最も適した環境のバンは、水田にいつもいて大きな声を出して番をしてくれているからその名前がついたともされています。水田の減少とともに数を減らしているバンにくらべ、より広い湖沼や大きな川で集団生活をするオオバンは、水田減少の影響も受けず、多くが生息していた中国などの大陸から、より環境の良い日本列島に住み替えたと考えられています。最初は琵琶湖に集結していましたが、今は全国に散らばっています。

全身黒というと光沢のあるハシブトガラスなどを思い浮かべますが、オオバンは光沢がなく背面は淡いグレーがかっていて光の当たり具合で何とも言えない美しさを見せてくれます。光沢のない黒は熱を吸収しやすいので暑いのは苦手ではないかと思われます。温暖化の影響はあまり関係なく増えているのかと気になります。

数が増えていたチョウも今月までがよく見られる時期です。ミドリヒョウモン、アサギマダラ、ヒオドシチョウ。成虫越冬するものもしないものも名残の季節を楽しみたいです。

早くから咲いていたコウヤボウキ、チャノキ、ヤクシソウなどの花はまだ見られます。園芸種のサザンカも咲き始め、吸蜜に訪れる昆虫の中にはスズメバチの仲間もいるので注意が必要です。ジョロウグモも秋空に浮かぶように巣を張っています。エンマコオロギやササキリ、鳴く虫たちの声も涼やかです。

10月9日は細い月と金星が、14日には上弦を過ぎた月と土星、15日には月と木星が近づきます。そして18日は十三夜。後の月で、栗名月とも呼ばれます。実りの秋を迎えている森ではコナラやクヌギのドングリが足元で見つかる事でしょう。

オオバン

    ミドリヒョウモン

    チャノキ



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