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こわくない虎トラツグミ~ふれあいの里だより令和4年1月号~

新しい年が始まりました。今年は寅年。トラは現存するネコ科最大の動物で多様な環境に生息していますが見晴らしの良いところにはめったに出てきません。縞模様は茂みに潜むのに適していると言われます。日本にトラはいませんが、林下の茂みなどにそっといるのはトラツグミです。

トラツグミは北海道、本州、四国、九州の丘陵地や低山の広葉樹林に生息・繁殖し、樹木の多い公園などでも見られます。冬には本州の関東、中部地方以南の雪の積もらない地方で生活しています。

黄色と黒色の虎模様が特徴で、名前の由来となっています。体長は30センチメートルほどでツグミの仲間では大型です。

薄暗い時間や場所を好むので見かける機会が少ない分、出会うと嬉しくなってしまいます。センター周辺では冬季に見かけることがありますがやはりそう多くはありません。薄暗い時間に薄暗い場所で行動するため眼が大きく発達していると言われ、つぶらな眼は可愛さを増しています。

雑食性で、主にミミズや昆虫を食べますが冬季には木の実も食べます。両足を交互に飛び跳ねたり腰を振ったり、身体を低くして走ったりして虫やミミズ、陸生貝類などを食べる様子はちょっと奇妙なダンスのようです。

繫殖期は4月から8月ころで、木の枝の上に枯れ枝や苔類で20センチメートルくらいの椀型の巣を造ります。オスのさえずりは「ヒィーヒィー」「ヒョーヒョー」といった笛のような物悲しい声で、時には「キーン」と金属音のような声でも鳴きます。夜間や早朝、時には雨天や曇天の昼間に鳴くこともあって気味の悪い不吉な鳥と言われていたこともあります。江戸時代には『鵺(ぬえ)』や『鵺鳥』と呼ばれ恐れられていました。今では『鵺』は妖怪や物の怪の名として使われています。近年では金属音はUFOじゃないかと言われることもあったとか。

よしゑやし直(ただ)ならずともぬえ鳥の

       うら泣き居りと告げむ子もがも

(柿本人麻呂  万葉集  巻十  ニ〇三一)

-直接会えなくてもいいがひっそりと嘆いていることをあの人に伝えてくれる子がいてほしいなあ-

万葉集にはぬえ鳥として6首読まれていますが、会えなくて嘆き悲しむ織姫や片思いなど切なさや寂しさを表現しています。

冬は身近な薄暗い茂みや木陰で出会えるかもしれないトラツグミです。虎模様は保護色になっていますので落ち葉をかき分ける音が聞こえたら目を凝らして探してみてください。

トラツグミはもちろん、野鳥(小鳥)たちを特に身近に見られる季節です。単独で冬を越しているツグミの仲間やモズ、ルリビタキ、ジョウビタキ。シジュウカラを主とした群れや、エナガを主とした群れにコゲラ、ウグイス、メジロなどが加わった混群に出会うと得したような気分にもなります。

いつもは春先になっても残っているマンリョウの実がすでにずいぶん食べられています。野鳥たちにとっては餌の少ないつらい時期でしょう。

ウグイスカグラやウメの花が咲き始め、光の春は来ていますが寒さはこれからが本番。夜空に輝く星はひときわ輝いて見えます。元旦の未明に細い月と火星が大接近、4日未明、しぶんぎ座流星群が極大を迎え、夕方には細い月と水星が接近します。13日夕方には西南西の低空で水星と土星が接近します。太陽に近くなかなか見る機会のない水星です。

寅年は、春が来て根や茎が生じて成長する時期、草木が伸び始める状態だとされています。明るいニュースのたくさんある一年でありますように。

トラツグミ

   マンリョウ

    ウグイスカグラ



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