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アセビ可憐な姿に毒を秘め~ふれあいの里だより令和4年2月号~

寒さで着物を更に重ねて着ることから『衣更着』となったという説が有力とされる如月。梅の開花のニュースも聞かれ始め、そして2月4日は『立春』です。暦の上では春でも寒さはまだまだ続きます。そんな中花を咲かせ始めるのがアセビです。

アセビは本州、四国、九州の山地の日当たりの良いところに生育するツツジ科の常緑低木から小高木で、庭木としてもよく植えられ、ピンクの花の色のものや新芽が特に赤くなるもの、斑入りのものなど品種も出回っています。半日陰でも花を咲かせ、和洋どちらの庭にも合います。日本以外では中国にも分布します。

アセビは2月下旬から5月に枝先の葉腋から10センチメートルから15センチメートルの円錐花序を出して直径6ミリメートルから8ミリメートルほどの白いスズランのような花を多数咲かせます。英名のLily of the valley bush(低木のスズラン)はまさにこの花の形を表しています。もう一つの英名はJapanese andromedaでギリシャ神話の美しいアンドロメダ姫に由来しますが、これは欧米に咲く別の花であるアンドロメダに花が似ていたことからつきました。学名のPieris japonicaのPierisはギリシャ神話の芸術、哲学、天文などの知的活動の女神たちを意味します。

漢字表記は馬酔木。これは葉や茎に有毒のアセトポキシンが含まれているため、馬が食べると酔ったようにふらふらとした足取りになるところからついたとされます。奈良公園にはアセビが沢山ありますが、鹿たちに食べられないからだとか。さらにアセビの落ち葉にはほかの植物の成長を抑制する物質が含まれていてアセビの下ではほかの植物が育ちにくいのでますますアセビばかりとなっていきます。また、葉を煎じて殺虫剤にするという用途もあり、古代『葉守り』とも呼ばれていました。

別名は足のしびれが縮まったとも言われるアシビや、アセボ、アシミなど多数あります。古くから親しまれてきた馬酔木は万葉集に10首詠まれています。

鴛鴦(おし)の棲む  君がこの山斎(しま)  今日見れば

      馬酔木の花も  咲きにけるかも  -巻20の4511

この歌はアセビの花が稲穂に似ているところから豊穣、繁栄のしるしともされ祝歌として詠われた例で、誕生日の宴席でのものです。

花の後には直径5ミリメートルほどの果実をつけ9月から10月ころ褐色に熟すと上向きに裂け、風に揺れると種子がこぼれ落ちます。その頃には翌春に向けた蕾が出来ています。早いときは1月から咲き始めるものもあり寒風に揺れながら咲いているさまはけなげでもあります。排気ガスや汚染にも強く街路樹にも向いています。可憐で強いアセビです。

冷え込む中夜空を眺めるのは大変ですが、明るい星やわかりやすい星座がまだまだ見頃です。金星は明けの明星として輝いています。13日には最大光度となり日の出前の薄暗いうちから何度も位置を確認していると日の出後も見つけることができるほどです。

そろそろ恋の季節が始まる小鳥たち。混群からペアへと変わってきます。冬越しに来ているジョウビタキやルリビタキ、シロハラなどはもうしばらく見られます。

日差したっぷりの日には成虫越冬をしているキタキチョウやムラサキシジミがふらふらと日向ぼっこをしに出てくるかもしれません。

アセビ

   ルリビタキ

    ムラサキシジミ



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