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小さなトラ、トウキョウヒメハンミョウ~ふれあいの里だより令和4年8月号~

暑さのピークとなる8月上旬、今年は7日が秋の気配が立ち始める『立秋』です。セミの声が降り注ぐように聞こえてくる中、野鳥たちは換羽の季節でエネルギーを使うため、外敵に見つからないように静かにしています。チョウの姿も目立ちません。樹液にはカナブンや小さな虫たちが集まっています。

ふと足元に目を向けると小さなハエのようなものが飛び立ちます。少し前に飛んでは止まり、少し前に飛んでは止まりを繰り返します。これがトウキョヒメハンミョウです。

トウキョウヒメハンミョウはその名の通り東京を中心に分布し、山口県、福岡県などにも定着しています。学名はCylindera kaleea yedoensisで、yedoensisは江戸に由来します。原種は台湾産で、日本で独自に変異、定着したと考えられています。

ハンミョウと言うと体長2センチメートルほどのカラフルできれいな甲虫を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、トウキョウヒメハンミョウはその半分ほどの大きさで体色は赤紫色を帯びた銅色でかなり渋めです。とはいえ光が当たるとその小さな脚などところどころで緑色を帯びた金属光沢の部分が見られます。

成虫は4月から10月ころまで見られますが特に夏に多く出会えます。

ハンミョウの仲間は前述のような少し前に飛んでは止まる習性から「みちおしえ」や「みちしるべ」とも呼ばれます。英名ではTiger Beetle。トラの名に負けない強い牙を持った肉食性の甲虫です。もっとも小さいうえに後姿を見る方が多いので、ずいぶん印象が違う正面からの姿を確認することは難しいことでしょう。

平地から低山地の林縁や公園、人家の庭などにも生息するトウキョウヒメハンミョウ。次第に各地に分布を広げているようですが、幼虫は土に巣穴を掘ってその中で暮らすので、土がないところでは生息できません。幼虫は芋虫型で穴を頭でふさぐような形で待ち伏せし、近くに来たアリなどを捕食します。成虫は地面近くでアリやハエ、ミミズなどを捕食します。

この辺りでは身近にいるトウキョウヒメハンミョウ。足元を身軽にさわさわと移動していく小さな生きものについて行ってみるのも面白いかもしれません。

夏の盛りには甘い香りを漂わせながらクサギが夏を謳歌するかのように咲いて数々の虫たちを迎えているばかりで、他には目立つ草木の花はありません。それでも立秋を過ぎ1週間もすると草本や虫たち、さらには野鳥にも変化が訪れます。ナンバンギセルやカントウヨメナ、コオロギの仲間たちの声も盛んになって来ます。静かにしていた野鳥の声も増えてきます。

8月1日から7日は『スター・ウィーク~星空に親しむ週間~』で、この頃には全国で天体観望会などの関連イベントが開催されます。今年はこの期間中の4日が旧暦の7月7日、伝統的七夕です。21時ころの夜空にはほぼ真上に織姫(ベガ)彦星(アルタイル)が輝きます。空の暗いところだと天の川を挟んで二つの星と天の川の中で輝くデネブを結んだ夏の三角を探してみましょう。見ごろを迎える土星と12日は満月が近くに見えます。そして15日深夜には夜半の明星と呼ばれる木星と月が接近します。この頃には夜聞こえてくるのはセミの声からコオロギの仲間たちに変わっています。

トウキョウヒメハンミョウ

    クサギ

   ナンバンギセル



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