枯野に輝くヒヨドリジョウゴ~ふれあいの里だより令和4年12月号~
今年もいよいよ師走となりました。夜空には明るく輝く冬の星々がにぎやかです。12月1日に地球と最接近した火星は一晩中赤く輝いています。
葉を落とし始めた木々、地面では枯れた草も目立ち始めています。ほとんど葉を枯らしながらも赤い実を輝かせているのはヒヨドリジョウゴです。
ヒヨドリジョウゴは日本全土の山野に生える、ナス科のつる性多年草です。全体に軟毛が密生し、ほかのものに絡みついてのびます。葉は長さ3~10センチの卵形で、下部の葉には深い切れ込みがあります。触ると軟毛があるのでふわふわとしています。白い直径1センチほどの可憐な花を8月から9月ころに多数咲かせます。花期が長いので、花と実が同時に見られます。直径8ミリ程度の果実は球形で、緑から赤に熟します。花、緑の実、赤い実が並ぶこともあります。透明感のある実は日に透けて中にたくさん種があるのが見えます。緑の時も赤く熟した時も野山の宝石のように輝きます。
ヒヨドリがこの実を好物にしていることから鵯上戸と名前がついたとされますが、全草に毒性物質のソラニンを含むので、人が誤って果実などを食べると嘔吐、下痢、腹痛、胃炎、最悪の場合は命にかかわります。ヒヨドリは食べても大丈夫なのかと思いますが、実際食べているところを見たという話はほとんど聞かず、冬枯れの中いつまでも実は残っています。ですがヒヨドリが実を食べる瞬間をついに目撃しました。そのあと特に変わった様子はなかったので安心しました。ただ、貪り食うというのではなく、「試しに食べてみた。」という感じでした。
毒と薬は紙一重。中国では白英(はくえい)と呼び解毒、解熱、利尿にもちいたり、癌や急性黄疸型肝炎の治療に用いたりしています。日本でも民間療法として食酢に漬けたものを帯状疱疹の外用薬に、煎じたものを解毒、解熱、利尿促進に使われてきました。ただし多量に服用しないように注意が必要です。
次第に少なくなっていく木の実や草の実。ヒヨドリジョウゴの実はますます輝きを増すかのようです。カワラヒワやアオジは草の種子を食べています。餌が少なくなっていくこれからは野鳥たちも大変です。
ただ野鳥観察には木々が葉を落としたこれからが最良の時です。葉を落とした木々の枝には個性豊かな冬芽が付き、枝にはカマキリの卵のうが見つかることもあります。
成虫越冬しているムラサキシジミやルリタテハはまだ暖かい日差しの下で翅を広げていることもあります。それぞれの生きものたちが冬をそれぞれに乗り越える工夫をしています。春を待つのは人間だけではないようです。
今年は12月7日が大雪で、22日が冬至、北半球では夜の時間が一番長い日です。この辺りではまだ雪の便りはないでしょうが、昼間の時間は少しずつ長くなっていきます。22日の埼玉の日没は16時32分。日没の時間は分刻みで遅くなりますが日の出はまだ遅くなります。日の入りから30分後から1時間くらいの約30分間、12月20日ごろから31日ごろまで夕方の空に水星から海王星まで7惑星がすべて並びます。25日からは月も加わります。天王星と海王星は肉眼では見えませんが、地球を含めて惑星パレードは貴重です。12月14日はふたご座流星群の極大日。流れ星に来る新年の幸福を願うのも良いですね。
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