1. TOP
  2. いきふれ自然情報
  3. 初夏を知らせるオトコヨウゾメ~ふれあいの里だより令和5年4月号~

ここから本文です。

初夏を知らせるオトコヨウゾメ~ふれあいの里だより令和5年4月号~

新年度の始まり4月。制限の多かった昨年までを経て今年は特に新たな始まりを実感しそうです。桜前線は記録的な速さで北上し3月中に東北へ達しました。4月8日は『花まつり』。お釈迦様の誕生日ですが、10年ほど前はちょうどこのころ桜が満開でした。入学式も満開の桜の下での風景でしたが今年はこの辺りでは葉桜になっていそうです。

開花が早くなっているのはソメイヨシノをはじめとする桜ばかりではありません。桜が咲きスミレが咲き足元を彩る草丈の低い春の草花が数々咲いた後は、木々の白い花の季節。初夏へとなっていきますが、その先駆けとして例年4月中旬に咲き始めるオトコヨウゾメが今年は3月に咲き始めました。

オトコヨウゾメはガマズミ科の落葉低木で、北陸を除く本州、四国、九州の山地の樹林内や林縁に生育する日本固有種です。

オトコヨウゾメという名前が印象的ですが、ガマズミ類をヨソゾメと呼ぶ地方があり、ガマズミは果実が熟すと食用になりますが、本種は果実が痩せていて数も少なく食用にならないので男とついたという説があるものの、定説はありません。

4月から6月にかけ、短い枝先に一対の葉と短い主軸に紅色を帯びた2センチから3センチの柄の白い小さな花が間を詰めて3個から30個ほど咲きます。花は紅色を帯びることが多くあります。花冠は直径6ミリから9ミリで5中裂し、おしべは5個で花冠より短くなっています。まばらでうつむきぎみに咲く姿は可憐です。

長さ5ミリから8ミリの楕円形で、9月ごろから赤く熟す果実も長い柄の先にぶら下がる様は可憐です。

花も実も可憐なら長さ3ミリから7ミリの深い紅色をした卵形の冬芽も可憐です。

紫から始まり紅や黄色に変化する紅葉も独特で目を引き、四季を通して奥ゆかしい美しさを楽しむことができます。ただ葉は枯れると黒くなり、果実も最後は黒くなります。

先に食用にならないと記述しましたが、毒があるわけではなく、生では苦みがあっても美味しい果実酒になります。

早春に勢いよく芽吹いたと思ったらすぐに小さな蕾が顔をのぞかせ春の訪れを告げ、花は初夏を告げます。春夏秋冬それぞれに目も心も楽しませてくれるようなオトコヨウゾメです。

次々と花が咲いていく中どことなく虫の姿が遅れ気味の感があります。でも葉を広げたばかりの柔らかいコナラの葉にはすでに小さな穴が開いていたので虫たちが活動を始めているのは確実です。蛹で冬を越したアゲハも飛び始めています。

4月は気が付けば初夏の様相を呈するようになっています。ウグイスが朗らかにさえずる中、例年5月20日ころに聞こえるカッコウの声を早くも3月に聞いたとか。冬の間姿を見せていて、ついこの間までいたと思っていたジョウビタキも繁殖地へ旅行中です。

スミレの仲間もあっという間にこの辺りで最後に咲くツボスミレが3月中に咲き始めました。追い立てるように黄色いアオオニタビラコが咲き、ニガナも咲き始めます。

今年は4月5日が万物が清らかで生き生きとするころと言われる『清明』で、20日は『穀雨』。あらゆる穀物を潤し育てる恵みの雨が降るころとなり、暦の上で春はフィナーレを迎えます。

 

オトコヨウゾメ

  アゲハ

    ツボスミレ



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています