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サトキマダラヒカゲ夏の木陰に~ふれあいの里だより令和5年5月号~

  卯の花もいまだ咲かねば霍公鳥(ほととぎす)

   佐保の山辺に来鳴き響(とよ)もす  万葉集巻八  大伴家持

早くも初夏の様相になった狭山丘陵。例年ゴールデンウイークのころに咲き始めるエゴノキも4月に咲き始めました。卯の花(ウツギ)が咲くのも早くなりそうです。10日からはバードウイークですが、先日子育てのために帰ってきて移動中のツツドリの声も聞かれたとのこと。木々の緑は同じく帰ってきたホトトギスの声がいつ聞こえてきても不思議はないほど濃くなってきています。木の枝葉には野鳥たちの子育てに欠かせないごちそうのガの幼虫の姿もよく見かけます。

チョウの姿も増え、早い季節の進みと共にサトキマダラヒカゲも目にするようになりました。

サトキマダラヒカゲは北海道、本州、四国、中国、九州の平地から低山地、市街地で見られる日本固有種のチョウです。

蛹で越冬し、寒冷地では年1回の発生ですが、普通5月から6月と7月から8月の2回発生します。季節により変異があり、春型は夏型に比べて表面の黄色斑が発達し、後翅裏面の眼状紋が小型となります。

日陰を好み、樹液や腐った果実に集まり、花を訪れることはほとんどありません。オスは湿地で給水することもあり人の汗に寄って来ることもあります。俊敏で不規則に飛び回り、オス同士で追飛行動をし、ほかのヒカゲチョウの仲間にも行います。止まっているときには翅を全く開きません。これはほかのヒカゲチョウには見られない大きな特徴です。

幼虫の食草はイネ科のメダケ、ネザサ、マズマネザサなどで、葉裏に2個から30個まとめて産卵します。

ヤマキマダラヒカゲとよく似ていて、1970年まではキマダラヒカゲとして1種とされてきたものが、里にいるものと山にいるもので分けられたとされるものの両種が混在することもあります。後翅の裏側の三つの斑紋が大きくずれているとヤマキマダラヒカゲで、大きくずれなければサトキマダラヒカゲです。ただヤマキマダラヒカゲが平地にいることはあまりないので、狭山丘陵周辺で身近に見ることができるものはまずサトキマダラヒカゲと考えて良いかもしれません。1種とあつかわれていたチョウを異なる種と結論を得られたのは静岡の高校で教員をされていた高橋真弓氏の長年の研究の結果です。

夏の樹液酒場は終日開放。夜はカブトムシやクワガタたちが、昼はサトキマダラヒカゲやカナブンそしてオオスズメバチなども訪れます。いろんな虫たちが訪れるので楽しみですが注意も必要です。

年に1度発生するオオミドリシジミなどのゼフィルスの仲間たちがクリの花で吸蜜している姿も目にするようになります。今年も最初に出会うのはアカシジミでしょうか。

花が早く咲いていき、初夏の白い木々の花もガマズミが咲き終盤を知らせ、足元ではニガナやハナニガナが早春から続いていた草本の花たちの締めくくりを告げているかのようです。今年の5月の風が運んでくれるのは花の香りより緑の香りが主役になりそうな気配。森林浴を思う存分楽しめそうです。

今年は5月6日が立夏で21日が小満。草木はもとよりすべてのものが成長し天地に満ち始めるころとなります。24日は日没後の西空で細い月と火星が接近します。少し離れたところには宵の明星金星が輝いています。

サトキマダラヒカゲ

  ガマズミ

    ハナニガナ



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています