世界に広がるヒメオドリコソウ~ふれあいの里だより令和7年3月号~
春めく日もあったかと思えば最強寒波に大雪、少雨に乾燥、森林火災など今年の2月も気象に関連するニュースが後を絶ちませんでした。
遅れていた梅や河津桜の開花もやっと進み、次に気になるのは桜前線ですが、ほぼ平年並みになりそうで、東京の3月21日ころをスタートに進んでいきそうです。
足元に咲くオオイヌノフグリやホトケノザも例年よりやや遅れ気味でしたがあっという間にお花畑が広がりそうです。
ホトケノザと同じような場所で咲き、よく似た花を咲かせるヒメオドリコソウ。この花も早春から咲き始めます。今では道端などで普通に見られますが明治中期に渡来したヨーロッパ原産の帰化植物です。シソ科の2年草で、東京周辺に特に多く、強い繁殖力で、日本全国に分布するほか世界中に広がっています。
ホトケノザと花の形は似ていますがホトケノザは花が丸い形をしている葉の上に突き出るような形で咲き、ヒメオドリコソウはスペード型をした葉の間から咲きます。葉は先端に行くほど紫色を帯びるのが特徴です。
在来種のオドリコソウは花の形を笠をかぶった踊り子の姿に例えて名が付いたとされ、それに似ていて小さいところから姫踊り子草とつけられたとされています。
帰化植物の方が在来種より大きく繫殖力も強いことが多く、名前もどちらかというと気の毒なくらいのものが付いていることが多い中、可愛い名前をもらっています。その可憐な姿とは裏腹にしたたかなくらいに広がりずっと前からそこにいたかのように存在しています。
ヒメオドリコソウは日当たりの良い場所に見られますがオドリコソウは山野や道端の半日陰に群生しますのでヒメオドリコソウがオドリコソウの生息場所を侵食したとは考えにくいのですが、狭山丘陵周辺ではオドリコソウはあまり見られません。花言葉も似ていてともに『陽気』、『快活』がありますがオドリコソウは『隠れた恋』、ヒメオドリコソウには『春の幸せ』というのがあります。
種子にはオドリコソウやホトケノザと同じくアリが好むエライオソームという付属体が付いていてアリによって種は運ばれます。蜜は甘く子供のころ花をつまんで吸ったという話も聞きます。花期も長く花の少ない時季には虫たちには貴重な蜜源になります。
明るい冬の星座ともお別れの時が近づいています。1日には細い月と水星が接近しますが、8日水星が東方最大離角となり西の低空で見やすくなります。太陽に最も近く夜明け前か日没後のわずかな時間にしか見ることができない水星。有名な天文学者のコペルニクスさえ生涯見ることができなかったという逸話さえあります。明るい金星を目印にさらに低空を探してみてください。
今年は3月5日が啓蟄、14日は満月でワームムーンとも呼ばれます。15日は七十二候の菜虫化蝶(なむしちょうとなる)で青虫が羽化して紋白蝶になるころといわれます。成虫越冬をしたヒオドシチョウやキタキチョウに続き、暦とそう違わないころに蛹で越冬したモンシロチョウも見られるようになります。
寒暖差の変化が大きくなりそうですが、野鳥たちは巣造りを始めています。繫殖地へと移動中の野鳥もいます。生きものたちの変化も大きい3月です。
![]() ヒメオドリコソウ |