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ウスバシロチョウ優美に舞い~ふれあいの里だより令和7年4月号~

冬に春にそして初夏も、めまぐるしく入れ替わったような3月。4月のスタートも狭山丘陵は冬のような寒さです。一気に春めいた景色も少し足踏み。スミレの仲間が次々と咲いていく中、冬から新葉出し春を待っていたようなムラサキケマンの花は咲くのをためらっているかのようです。

葉をすっかり広げたムラサキケマン。この葉を食草としているのがウスバシロチョウです。

ウスバシロチョウは北海道、本州、四国の平地から山地の林や草原などに分布するチョウで、モンシロチョウなどと同じシロチョウ科と思われがちですが、アゲハの仲間で、ウスバアゲハとも呼ばれます。その名からもわかるように、薄く透き通るような白い翅を持ち、開張6~7㎝で体は毛深く、頭部の周りは黄色い毛で覆われています。

アジア大陸中央部の乾燥した山地にウスバシロチョウの仲間は多く、赤や青の派手な斑紋を持ち美しいことから人気がありますが、モノトーンの美しさは珍しいと言えます。

珍しいと言えば多くのアゲハチョウの仲間はさなぎで越冬しますが、ウスバシロチョウは卵で越冬し、早春とは言いがたい2月頃に孵化し、食草を食べ始めます。ムラサキケマンの葉を折に触れ見てみるのですが幼虫を見たことがありません。それもそのはず多くのチョウの幼虫のように常に食草にいるのではなく、食草の根元にいて食べるときにだけ上がってくるのです。しかもそれは夜の場合もあるとか。やがてさなぎになりますが、これもチョウとしては変わっていて、繭を作ってさなぎになるのです。繭は落ち葉などに作り、このあたりでは4月下旬頃、寒冷地では6月から7月頃成虫になり、いずれも年に1回の発生となります。        オスの翅表はメスより白く、腹部には毛が多くなっています。交尾後にはメスに受胎嚢を付け、他のオスの交尾を妨げます。メスは地面を歩き、湿り気のある立木や高い草の根元、低い草の中にある枝や小石などに産卵します。

北海道にはよく似たヒメウスバシロチョウがいますが、胴体の毛の色が灰白色で、ウスバシロチョウは黄色なので区別ができます。

ムラサキケマンのほかにエゾエンゴサクやヤマエンゴサクなど有毒植物のケシ科の葉を食べることから、幼虫も成虫も体内にこの毒を蓄積していると考えられます。ふわふわと優雅にも見える飛び方をするのはこのためかもしれません。

成虫は各種の花を訪れ吸蜜し、特に白い花を好む傾向があるようです。このあたりではムラサキケマンの花が終わり葉も見かけなくなる頃、ハルジオンやヤマツツジ、花から花へとゆったり飛び回る姿に出会えるかもしれません。発生がやや局地的なので会えるところでは沢山、そうでない所では全く出会えないこともあります。

今年の夏も暑い予報。北方系チョウのウスバシロチョウの仲間の中では最も暖地に分布し、卵で夏を越しているとはいえ、気がかりです。

シジュウカラやホオジロなど子育てをしている鳥もいればまだ北へと帰って行かないシロハラやツグミに出会えることもあります。越冬から帰ってきたツバメが空高く飛んでいる姿も見られることでしょう。エナガの幼鳥にも出会えるかもしれませんよ。

金星は明けの明星として東の低空に輝くようになり5日には土星と接近します。25日には細い月も加わります。5日の夕方から翌未明にかけては上弦の月と火星が接近します。13日は今年一番小さく見える満月です。宵の空では冬の星座たちがそろそろ見納めで、冬の大三角は南西の低空に輝きます。昇ってくるのはおおぐま座やしし座、おとめ座などの春の星座。北斗七星のひしゃくの柄からうしかい座のアルクトゥールスを通りおとめ座のスピカへとつなぐ線は春の大曲線と呼ばれます。

ウスバシロチョウ

  ムラサキケマン

        ヤマツツジ



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