ホシホウジャク晩秋の花から花へ~ふれあいの里だより令和7年11月号~
今年も残暑が続いた10月。下旬になり急に冬を思わせるような日もありました。そして11月7日は『立冬』。この日埼玉の日の出は6時9分、日の入りは16時41分です。秋分の日の日の入りが17時37分でしたから1時間近く早くなっています。夕暮れが早くなると秋の深まりを感じます。
いつの間にか虫たちに出会うことも少なくなりました。花も少なくなりましたが、コウヤボウキやヤツデ、キヅタのほかチャノキの花も残り、園芸種のサザンカが次々と咲き始めています。
それらの花を見ていると、小さなアブの仲間や成虫越冬をするキタキチョウなどのほかに花から花へとせわしなく飛び交う姿を目にすることがあります。
これはスズメガ科のホシホウジャクです。開張40~50mmで、日本全国の山地から平地に分布し、市街地でも見かけます。ホバリングしながら長い口吻を伸ばして吸蜜し、全体に茶色っぽく後翅のオレンジ色と腹部の白い帯が目立ちます。背中の真ん中に縦線とその先に三角の模様があります。
太い胴体で素早く飛び回るのでハチかと思われたり、ホバリングしながら蜜を吸う姿から日本にもハチドリが?と思われたりします。
漢字表記は星蜂雀、蜂雀はハチのように見えるスズメガのことで、足をたたんで飛び回り、翅に目立つオレンジ色という姿はハチに擬態していると言われます。そして、腹部にある丸く白い模様を星に例えたとされます。
葉上などで休んでいるときは目立たないどころか、枯葉にとまるとなかなか見分けがつきません。
7月ころから11月まで2、3回発生を繰り返しますが、越冬態には諸説あり、幼虫、蛹や成虫、暖かい地方で冬を越したものが北上してくるという説もあります。冬でも暖かい日には見かけることもあり、耐寒性は強そうです。
幼虫はヘクソカズラなどアカネ科の葉を食べ、全体が黄緑色になる個体と黄褐色になる個体がいます。地表で落ち葉などを綴って繭を作り蛹になります。
日中活発に活動しているかと思えば、夜間灯火にも飛んできます。
似た仲間にクロホウジャクがいますが前翅の先端付近に模様があり、一般的にホシホウジャクより大型です。幼虫はユズリハなどの葉を食べます。また、ヒメクロホウジャクはやや小型で、体色は淡黄緑色、後翅のオレンジ色が目立ちません。幼虫はアカネ科のアカネやヘクソカズラの葉を食べます。さらに小型のホシヒメホウジャクもいて幼虫はやはりアカネ科のヘクソカズラなどを食べます。オオスカシバはその名の通り翅が透明で、淡黄緑色、赤、黄色と派手な色の体をしていて羽ばたきながら足で花にとまるようにして吸蜜します。幼虫はクチナシの葉を主に食べます。
オオスカシバ以外はホバリングしている時にはなかなか種別を区別しにくいですが、数も多く、この時期では特にホシホウジャクの可能性が高いです。
ガマズミやヒヨドリジョウゴの赤い実も少なくなってきました。冬越しのためにやってきた野鳥たちでにぎやかになってきていますが餌は次第に少なくなっていきます。人間の目を楽しませてくれる紅葉は、朝夕の冷え込みで少しずつ進んでいます。
11月2日は十三夜、この日夕方から翌日の未明にかけ土星が寄り添います。5日は満月、今年最も大きく見えるスーパームーンです。10日の宵から翌日の未明には木星と、29日の夕方から翌日の未明にかけては上弦を過ぎた半月と土星が接近します。18日の未明から明け方はしし座流星群が見ごろとなります。例年の出現数は少ないものの今年はやや多くなるのではという予想もあります。
コオロギの仲間の声も随分寂しくなりました。深まる秋、まだアキアカネの姿も見られます。ホシホウジャクをはじめ小春日和にはまだまだ虫たちに出会えることでしょう。
ホシホウジャク |


