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冬はじめ、ヤツデの花火

(所沢市HPふれ里だより平成27年11月号より)

季節の進みが早かった今年、コウヤボウキやヤクシソウなどの晩秋に咲く花も早くから咲いています。
冬の始まりを告げるかのようなヤツデも既に咲き始めています。
白くやわらかな光の中でぽっぽっと上がった小さな花火、冬の扉が開いたよと瞬いている火花。そんな印象を受けるヤツデの花は、多くの植物が花を咲き終え、冬支度となったこの時季に貴重な花です。よく見ると小さなアリやアブ、ハチなどが吸蜜に訪れています。

ヤツデは、本州は茨城県以南の太平洋側、四国、九州、沖縄の海岸から丘陵に自生する常緑低木です。古くから庭木としてよく植えられ、このあたりではほとんどが庭に植えられていたものが野生化したものと考えられます。
雌雄同株で、11月から12月に、枝先に小さな花の丸い塊を円錐状に多数つけます。上の方には両性花、下の方には雄花をつけます。両性花は花弁が開くとまず雄しべが伸びて花粉を出します。花弁と雄しべが落ちると雌しべが成熟し伸びてきます。こうして自家受粉を避けています。翌年の4月から5月に赤紫褐色から黒紫色に果実は熟します。

別名のテングノハウチワは、葉の大きさや形が天狗の持つと言われるうちわを思わせるところからきていて、まさに言い得て妙です。『八つ手』とは言っても、実際は掌状に7から9裂し、基部は浅いハート型になっていて、沢山という意味で8の数字が使われたとされます。
珍しいところからか、末広がりを意味するからか、8つに裂けた葉を半紙に包むなどして背中に貼っていくと合格すると、受験のおまじないに使われてきたところもあります。5つに裂けた葉というところもあるようですが、これはご縁につながるからでしょうか?こちらも珍しいという点で共通します。

庭木として古くから植えられてきたのには、大きな掌状の葉が人を呼ぶと考えられ玄関先に植えられたり、汲み取り式のトイレだった時代、ウジ殺しとしてトイレの側に植えていたりという実用的な面がありました。葉を乾燥させたものは、去痰などの生薬として用いられますが、成分であるヤツデサポニンは、過剰摂取すると下痢や嘔吐、溶血を起こします。
学名は、Fatsia japonicaで、古い発音で8をふぁち、ふぁつと言ったことや八手(はっしゅ)に由来します。
また、竹や笹の筒で空気鉄砲を作りヤツデの実を玉にして子供が遊んだりもしたとか。今では庭が少なくなってきて少し遠い存在になりつつありますが、何となくいつも身近にあったヤツデが、ひときわ華やぐ季節です。

モズの声が高らかに聞こえ、ヒヨドリ、シジュウカラ、メジロやコゲラ。おなじみの野鳥たちの声に「チャッチャッ」というウグイスの地鳴きも聞かれます。冬越し前のキタキチョウがコウヤボウキの花などで吸蜜している姿も目にします。今年はとりわけ『実りの秋』が実感でき、野鳥たちは大助かりです。オトコヨウゾメも例年になくたわわに実をつけています。 木々は最後の輝きを見せ、やがて『山眠る』時へと移り変わります。

   

ヤツデの花              ヤツデの葉               キタキチョウ              オトコヨウゾメ

 



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