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世界を旅するヒメアカタテハ(所沢市HP「ふれあいの里だより平成30年1月号」より

今年は戌年。人間と最も古く暮らし始めたとされる犬。イヌタデ、イヌシデ、イヌザクラ。犬とつく植物はとてもたくさんあります。早春の花オオイヌノフグリは、冬の間から日だまりで咲いている姿をよく目にしますが、『春遠からじ』を実感するひと時と言えます。

さすがに1月にチョウの姿を目にすることはほとんどないものの、成虫で越冬している種類はたくさんいます。ヒメアカタテハもその一つと言えますが、越冬形態は決まっていないようです。

ヒメアカタテハは、前翅長25mmから33mmのタテハチョウ科のチョウで、色々な花で吸蜜し、樹液には来ません。チョウ類中で最も広い分布を示し、ほとんど全世界に産し、汎世界種(cosmopolitan species)として知られます。日本でも各地にみられる普通種ですが、個体数は多くありません。狭山丘陵では秋に多く見られるようになりますが、それでも毎日何頭も見られるというものではありません。

移動性が強く、2,000から3,000㎞は移動すると言われ、小さな体で北アフリカから地中海を渡りアルプスを越えて北ヨーロッパまで移動するルートは有名です。時に巨大な群れが気象レーダーに雲のように映りニュースになることも。ただしこの旅は片道切符。世代交代をしながら移動するので帰りは何世代か後の個体になります。土着している種はその土地ごとの特徴が斑紋に現れるなど土地ごとで特徴が出ることが多いのですが、ヒメアカタテハには地理的変異がないと言われるのもこうして世界中に広がったからでしょうか。

夏から秋にかけて、温かい地域から寒い地域に向かってどんどん分布を広げ、秋に向かって日本全土で数が増えるのは国外からの長距離移動個体も加わっている可能性があり、中国南西部やインド西部の半乾性の多発生地から来ているのではないかという説があります。

以前は関東以西の温暖なところでしか成虫越冬できないとされていましたが、温暖化の影響でしょうか、次第に成虫越冬できるエリアを増やしてきているようです。センターエリアでも12月に成虫を確認していますので、成虫越冬していると思われます。

幼虫越冬の場合は、食草のヨモギやハハコグサなどの葉を綴って巣を作ります。暖かい日は中から這い出てくることもあるようです。幼虫の方が寒さに強いとはいえやはり成虫越冬をしているアカタテハより寒さに弱く冬を越せずに死んでしまうものもいます。

アカタテハに似ていてやや小さいことから名前が付きましたが英名はPainted Lady。アカタテハに比べ後翅まで綺麗に化粧をしているということでしょうか。レディーや姫、女性のイメージが強いようですが、外見上は雌雄の区別が難しいこのチョウ。城の中にとどまらず生息域を果敢に広げていく凛々しいお姫様といったところでしょうか。移動に関してもそうですが、まだまだ謎が多いヒメアカタテハです。

移動と言えば今は冬鳥たちが渡ってきて冬越しをしています。狭山湖でもカンムリカイツブリやマガモやコガモなどの姿が見られます。時には求愛行動も見られます。

光の春は来ています。眠っているような森ですが枝先を花で彩るのは早咲きの梅が先でしょうか、ウグイスカグラでしょうか。


ヒメアカタテハ

オオイヌノフグリ

マガモの雄



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています