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ヤマトタマムシ梅雨空に輝いて(所沢市HP「ふれあいの里だより令和2年月6号」より)

夏日になったと思ったらまた寒くなったりさらには急な雷雨があったりする中、木々は次々と白い花を咲かせ、緑を濃くしていきました。

そして6月。日本列島は次々と梅雨入りしていきます。雑節では6月10日が今年の『入梅』です。5日は七十二候で『蟷螂生(かまきりしょうず)』この時期だけに発生するミドリシジミの仲間たち、ゼフィルスをはじめ昆虫たちは成虫になるものや孵化するものがたくさんいます。

ヤマトタマムシが2年から3年かけて成虫になるのも6月ころからです。金属光沢のあるこの美しい甲虫は古くから人々に親しまれてきました。タマムシ科の昆虫を総称してタマムシとも呼ばれますが、単にタマムシと言えばヤマトタマムシを指します。漢字表記は『玉虫』『吉丁虫』で、出会うといいことがあるとか幸せを運んでくるなどと言われ、タマムシをタンスに入れておくと着物が増えると言う俗信もあります。よく知られている国宝、法隆寺の玉虫厨子はヤマトタマムシの翅が貼られていたことからそう呼ばれます。長い年月を経た今はほとんど翅が取れ輝きを失っています。

ヤマトタマムシは体長30から41ミリメートルで本州、四国、九州の平地から低山地の広葉樹林で見られ、美しさから人気がありますが、卵はサクラ、エノキ、ケヤキ、カシ類などの弱った木や枯れ木、伐採木などに産み付けられ幼虫はその材を食べます。成虫はエノキ、ケヤキ、サクラなどの葉を食べることから農林業の有害昆虫、害虫とされます。一方絶滅危惧種となっている地域もあり、頻繁に出会えるわけではありません。

美しい昆虫はほかにもいますがほとんどの場合死んでしまうとその色が抜けてしまいます。ヤマトタマムシが死んでも輝き続けるわけは翅の細かな凹凸にあります。これは構造色と呼ばれ、翅そのものに色があるのではなく、光の干渉によってその当たり具合によってさまざまに光り輝いて見えるのです。ヤマトタマムシが天敵の多い昼間に活動することができるのも、一番の天敵といえる鳥は色が変わるものを嫌うことにあります。鳥よけに構造色のCD盤をつるしたりするのもこのためです。

あいまいな表現をしたりすることを「玉虫色の」と表現しますが、見方によってどのようにとらえることもできることをヤマトタマムシに例えています。

ヤマトタマムシは警戒心が強く人や敵が近づくと動きを止めたりぽとっと落ちたりして死んだふりをし、さらには敏捷に飛び去ってしまいます。でも体をほぼ垂直にした飛び方はちょっと滑稽です。翅に対して体が重いから仕方がないのですが、木に垂直に止まるには好都合なようです。

玉虫の玉は宝石を意味しますが、英語でもJewel beetle。古今東西宝石のように親しまれてきたヤマトタマムシです。

かつてはエノキやケヤキの大木に集まり真夏の炎天下光輝き野鳥を寄せ付けず飛び回るヤマトタマムシの姿が見られたと言われます。見上げればウラナミアカシジミやオオミドリシジミなどのゼフィルスたちが舞っているかもしれません。そこではクリが花を咲かせ足元ではイチヤクソウやオオバジャノヒゲが咲いているころです。

ホトトギスが夏の訪れを告げるように鳴き、シジュウカラは若鳥たちで群れを作ってどこか幼い鳴き声を交わしながら樹間を飛び回っています。9月ころまでがヤマトタマムシに出会えるチャンス。虹色の良いことが訪れますように。

ヤマトタマムシ

 

  アカシジミ

    イチヤクソウ

 



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています