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気づけば身近にクロコノマチョウ~ふれあいの里だより令和4年10月号~

台風が次々と日本列島を襲来した9月。10月は残暑のスタートになりましたが日が沈むとさすがに空気はひんやりとしてきました。地球温暖化の影響は数多く見られますが、南方系のチョウが狭山丘陵でも見られるようになってきているのもそのひとつです。

クロコノマチョウも温暖化の影響で北へ分布を広げていると言われ、狭山丘陵でもみられるようになったチョウです。

タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科のクロコノマチョウは成虫越冬をし、これはジャノメチョウ亜科では同属のウスイロコノマチョウと2種のみです。4月から5月に現われ産卵し、6月から7月に夏型が出現、9月から10月に秋型が羽化し越冬します。個体変異が多いのですが、夏型は少し小さく翅裏が橙褐色で、縞模様が見られ眼状紋が小さい。翅の縁が比較的滑らかという特徴があり、秋型は翅の縁の凹凸が目立ち前翅の先がより突き出しています。メスはオスに比べて翅形がやや広く、地色がやや淡色となります。翅を開くことはほとんどありませんが、褐色から黒みを帯びた褐色の地色で秋型は前翅の先の地色がオレンジがかり、その上に黒い目に星が入ったような模様があります。

前翅長35ミリメートルから39ミリメートルと大型なのに、夏型は木の幹に、秋型は落ち葉に止まると保護色でなかなか見つけられません。そのうえ日陰を好み、日中は薄暗いところで休止しているので歩いていて急に目の前の木や足元から飛び立ち「今のはクロコノマチョウだった?」ということがほとんどです。

夕暮れになると活発に活動し、家の中に飛び込んでくることもあります。花で吸蜜をすることはあまりなく、樹液や腐りかけた果実に集まり汁を吸います。

幼虫の食草はススキ、ジュズダマ、ヨシなどのイネ科で、卵は食草に3個から10個くらい1か所にかためて産み付けられます。これらの植物は日当たりのいい場所に多いので幼虫の方が見つけやすいでしょう。ススキの葉に食痕を見付けたら葉の裏を探してみてください。緑色の身体に黒いウサギみたいな顔の幼虫が若齢ほど固まっていてとてもかわいいです。蛹もヒスイのようなきれいな緑色で、食草などにぶら下がるような形でついています。

黒くて木の間でよくみられる蝶ということから黒木間蝶と名前がついたとされ、森林性が高く、樹間や落ち葉の間などで冬を越します。晩秋まで活動し、低温でも夕方活発に行動していますが、積雪のある所では冬を越すのは難しいようです。これからの季節まだまだ目にする機会のあるクロコノマチョウです。更に南方系のウスイロコノマチョウも北上していますが、こちらは土着性ではなく移動性が強いと考えられています。

花が少なくなってきた中コウヤボウキには、チョウを始め多くの虫たちが吸蜜に訪れます。ガマズミの赤い実も透明感が出てきてサンゴのようです。赤い実だけではなく瑠璃色の実や黒紫色など色とりどりの実が実りの秋を物語っています。足元には茶色く熟したドングリ。みんな森のごちそうです。

10月8日は十三夜、別名『栗名月』。この日はそばに木星が輝きます。3日は今年最大の上弦、5日は土星と月が近くに見えます。秋の日は釣瓶落とし、日没の時間は日ごとに早くなり、埼玉では10月21日から16時台になります。その頃熟した柿の実にクロコノマチョウが飛来しているかもしれません。

野鳥たちも冬支度。北から来た鳥、南へ行く鳥。1年中この辺りで過ごすシジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、コゲラなどはにぎやかな混群を作っています。モズは高らかに鳴き単独で冬を越す場所の宣言をしています。冬を越すためにやってくるジョウビタキにもほどなく出会えることでしょう。

クロコノマチョウの夏型

クロノコマチョウの幼虫と卵

    クサギ



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