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枯葉で冬越しミスジチョウ~ふれあいの里だより令和5年2月号~

昼夜はもちろん毎日気温のアップダウンが激しくなりそうな2月のスタートです。今年の『立春』は2月4日。冬至に太陽が復活し光の春が来ておよそ一か月半、暦の上の春もやってきます。本格的な寒さが続く中、凛とした青空に葉を落とした木々の枝がレーザーカットされた切り絵のように繊細な模様を描いています。

個性豊かな冬芽。ニワトコの芽はもう春が待ちきれなさそうです。心なしかアカシデの冬芽は赤みを増してきたように見えます。小さな赤い芽を二つ並んでつけているのはイロハモミジ。その枝に枯葉がくっついていたらそこにはミスジチョウの幼虫が越冬しているかもしれません。

ミスジチョウは北海道、本州、四国、九州に分布するタテハチョウ科のチョウです。成虫は年1回、5月から8月ころに発生します。翅を開いたときに3本の白い線が目立つところから『三筋蝶、三条蝶』と名前が付きました。埼玉県では平野部で数を減らし、丘陵地から低山帯に広く見られますがやや局所的で、準絶滅危惧種となっています。

翅を広げると55mmから74mm。森林環境を好み、木の上の方を滑空しながら飛びます。比較的早く飛びますが、翅を広げて止まることが多いので3本の線を確認してみてください。幼虫の食草はイロハモミジやオオモミジ、メグスリノキなどのカエデ属の葉です。食草の葉先に一つずつ産み付けられた卵は約2週間で孵化し、卵殻を食べ葉の先端部中央に小片を残して座とし、その両側から葉を食べ始めます。2齢までは座付近から数枚の葉片をカーテンのように垂らす習性があるので、葉先が垂れていたら幼虫がいる可能性があります。晩秋になると冬越しのために葉が落ちないように葉柄の基部に糸を吐き固定し、その上で冬を越します。枯葉のように擬態し、野鳥たちに襲われないようにしていますが、葉が残っているので私たちにとっては探す目印になります。

春になり食草が芽吹くと越冬に使った葉を根拠地として活動を始めます。新芽を食べ1回脱皮して越冬に使った枯葉や付近の枝などで蛹になり、1週間から11日間で羽化します。

成虫は地上で吸水したり、獣糞に来たりしますが花にはあまり飛来しません。ただ、木の白い花へは吸蜜に訪れることもあるようです。

コミスジと似ていて、その名の通りコミスジはミスジチョウより小さいのですが個体差もあるので大きさでは判断しづらいことが多々あります。確実なのは翅を広げて止まったときに一番上の白い線がつながっていればミスジチョウで、途中で2本に分かれていればコミスジです。発生時期も違い、コミスジは4月頃から10月頃まで年に3回程度発生します。幼虫の食草も違い、フジやクズなどのマメ科の植物です。よく目にすることができるのはコミスジですが、初夏にはミスジチョウと出会えるかもしれません。1番上の白線をしっかり確認してみてくださいね。数は多くはありませんがセンターエリアでも出会えることがあります。

関東で日の入りの時間は17時台になっています。1番星に輝くのは金星、2番星は木星。おなじみのオリオン座もまだよく見えます。その下にはウサギ座が隠れるようにあります。

北の国へ帰る日も近くなってきたカンムリカイツブリなどの水鳥たちや人里近くにいたジョウビタキもまだ観察のチャンスです。

早くから咲き始めたオオイヌノフグリは寒そうに見えます。12月から咲き始めているウグイスカグラは花数を少しずつ増やしています。春のさきがけとして梅の便りが聞かれ、スギ花粉の飛散がニュースになっていますが、同じく風媒花のヒメカンスゲも寒風の中咲き始めます。2月の異名のひとつに『恵風(けいふう)』があります。自然に恵みを与えたり成長させたりする恵みの春風です。

タテハチョウの仲間のルリタテハやアカタテハは成虫で冬を越しています。春めいてきた陽ざしの中で翅を広げている姿を見かける日もあるかもしれません。

ミスジチョウ

  イロハモミジの冬芽

    オオイヌノフグリ



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