タケニグサ夏の荒れ地で~ふれあいの里だより令和5年7月号~
しとしと降る梅雨の雨…とは様子が違う今年、7月は梅雨末期の大雨にも注意が必要です。春から咲き急ぐかのようにいろんな花が咲いていきました。以前は7月上旬ころ咲いていたリョウブもほぼ咲き終わり、いよいよ花の少ない時期となります。深緑の中、目を引くのはタケニグサです。
タケニグサは本州から九州の日当たりのよい山野の荒れ地や都市の荒れ地などにもみられる多年草で、中国や台湾にも分布します。
高さは1メートルから2メートルにもなり、その風貌はどこか外国から来たのではないかと思われるほどで、別名のチャンパギク(占城菊)は、ベトナム中部の占城に由来し、そこから来た植物と思われてついたようです。葉の形が菊に似ていることからキクとつきましたがキク科ではなくケシ科の植物です。
崩れそうなところや、人の手が入ってほかの植物が生えていないようなところに一早く生えてくるパイオニア植物で、その逞しさも相まってか夏の季語にはなっているものの、古歌の中には歌われていないばかりか邪魔者扱いされてきたようです。とは言え、欧米では園芸植物として栽培され、英名はPlume poppyで羽毛ケシ。花を羽毛に例えたのですね。
花期は6月から8月で、白い小さな花を多数、下から上へと咲かせます。花弁はなく、白いがく片は開花と同時に落ち、糸のようなおしべがたくさん広がります。良く見ると、とても繊細で美しいものです。遠目には上部の白い蕾、白いふわふわとした花、赤茶色い実と段々に見える時期が長くあります。
実は日に透かすと中の種が透けて見えてきれいです。初秋には小魚が沢山ぶら下がったような姿になり風に吹かれて人がささやくような音をたてます。このことからササヤキグサの別名も付きました。
茎の中が空洞で竹に似ているから竹似草とついたと言われ、竹と煮ると竹が柔らかくなるから竹煮草とついたとも言われますが、これは事実とは反します。
花言葉は『素直』、『隠れた悪』。竹のようにすっくと伸びた姿から素直が連想され、見た目にはわかりませんが有毒植物であるところから隠れた悪といったところでしょうか。
葉や茎を傷つけると黄色の乳液が出てきて、これには有毒のアルカロイド物質が含まれています。触れるとかぶれる恐れもあり口にすると量によっては命にかかわる危険性もあります。毒と薬は表裏一体。古来皮膚病やたむしの治療に民間療法として使われてきました。この乳液は虫にとっても毒で、虫よけや殺虫剤にも使われてきました。
異国情緒もあり堂々とした姿は屏風絵や襖絵としてよく描かれています。裏面に縮毛が密生している葉は風に翻ると白く涼しげです。上手に付き合えばとても心強い存在のタケニグサです。
夏本番、目にするチョウの数も増えますが様々な虫たちに出会える季節です。エゴノキの実にはユニークな姿のエゴヒゲナガゾウムシ。シオカラトンボ、コオニヤンマやミヤマアカネはさっそうと飛んでいます。ヤマユリはたくさんのチョウや虫を誘います。聞こえてくるのはニイニイゼミの声。ミンミンゼミやアブラゼミの声が加わるようになると暑さはいよいよ本格的になってきます。木から木へ虫を捕りながら野鳥たちは飛び交います。
七夕の星空は期待できないかもしれませんが宵の明星金星が10日は最大光度となります。下旬には見えなくなり8月下旬からは明けの明星として輝きます。梅雨明けが気になる7月、二十四節気は7日に『小暑』、23日に『大暑』となります。
タケニグサ |
前の記事へ 次の記事へ