1. TOP
  2. いきふれ自然情報
  3. 良薬は口に苦し?ニガナ~ふれあいの里だより令和3年5月号~

ここから本文です。

良薬は口に苦し?ニガナ~ふれあいの里だより令和3年5月号~

春が駆け足で過ぎていったような今年。5月1日の八十八夜を前にセンターエリアの茶畑でもすくすくとチャノキが新芽を伸ばしました。カマツカ、ミズキ、ガマズミと次々に咲き始め、初夏に迎える木々の白い花の季節を締めくくるかのようにエゴノキも咲き、早くも深緑の季節となってきました。

足元で咲く花も少なくなりましたが、黄色いニガナの花がさわやかな5月の風に揺れています。

ニガナは日本全土の日当たりの良いところに普通に見られるキク科の多年草です。人里近くから山地に至るまで晩春から7月ころまで時に群生し野山を彩りますが、都市化や農薬などにより姿を消しているところもあります。

すっと伸びた茎は20センチメートルから50センチメートルになり、葉は細長く基部は茎を抱きます。花弁が5枚あるように見えますが、一つひとつが舌状花と呼ばれる花です。変異が多く、全体にニガナより大きく舌状花が白色で8個から10個あるものはシロバナニガナで、その舌状花が黄色のものをハナニガナと呼びます。狭山丘陵ではニガナとハナニガナが混ざって咲いていることがあるので、舌状花の数を数えてみてください。

苦菜という名前は、茎や葉を切ると白い苦みのある乳液が出ることからついたとされます。乳液というと毒のように思いがちですが、苦いだけで、食用や煎じて健胃や鼻づまりの民間薬として使われてきました。ちなみに沖縄料理で知られるニガナはホソバワダンのことで別の植物です。

古来から身近な植物すぎたのか万葉集や古今和歌集などには歌われることもなく、ほかにも文学的な記述はされていないようで、平安前期の918年に編纂された現存する最古の薬物辞典(本草書)とされる『本草和名』には記述があります。

ニガナの花ことばの一つに『質素』があります。頼りなげなこの花も時に見事な群生を見せてくれます。そして身近でつつましく人に寄り添ってきた植物と言えるのではないでしょうか。

日に日に目にするチョウの数も増えてきました。年に1度発生するオオミドリシジミなどのゼフィルスの仲間、アカシジミやウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミにもそろそろ出会えることでしょう。

さわやかな風が運んでくれるのは、ノイバラでしょうかエゴノキの花の香りでしょうか。

モズはヒナが巣立ち、シジュウカラやホオジロは子育て中、夏鳥たちは移動中のものも多いですが、ツバメはすでに子育て中。繁殖地へ渡る途中のシロハラやツグミもいて、野鳥たちは様々な生活を送っています。繁殖地へと移動中のキビタキやオオルリ、カッコウやホトトギス。5月10日からはバードウィークです。野鳥たちとの偶然の嬉しい出会いが楽しみな季節です。

そして夜空にも注目です。5月26日は今年一番大きく見える満月、スーパームーンで、皆既月食です。埼玉県の月の出は18時40分、部分月食が始まるのは18時44分です。皆既食の始まりは20時10分前後で皆既の時間は15分程度です。そして21時52分頃には部分食も終わります。

飾らず弱弱しく見えても体にいいと親しまれてきたニガナ、太陽を浴びて咲く花には多くの虫たちが訪れています。静かなたたずまいは月にちょっぴり似ているかもしれませんね。

ニガナ

   ミズイロオナガシジミ

   ホオジロ



狭山丘陵いきものふれあいの里センターは 公益財団法人トトロのふるさと基金が指定管理をしています